第539話古代アルムス侵略戦21
孤立した一体に掴みかかったライナーは四方八方から帝級スキルが付与された攻撃を受ける。
このスキルの制限は厳しい。
何せ1秒間対象に触れ続けなければ発動しないのだ。
帝級クラス上位同士の戦いにおいて、1秒も相手に触れている事はほぼ不可能に近い…
だが、それはあくまで普通の戦いならばだ。
捕獲命令を受けた旧モデル特別仕様のラグアの分体はライナーを殺す事はしない…と言うかできない。
帝級スキルの嵐を受けボロボロのライナーを帝級スキルが付与された触手が拘束をはじめる。
がんじがらめ…
ライナーは身動き一つとれない状況だ。
そんな中、ライナーの帝級スキル、反転の帝は発動する。
そのスキルの効果は単純だ。
ほんの数秒…時間にして約5秒程だが、対象のステータスと全スキルを入れ替える。
ライナーが旧モデル特別仕様のラグアの分体の、数多の帝級スキルやエンペラーギフトを得れば、ライナーはこの闘いにおいて無双できるのか?
答えは否だ。
何故なら…
「ちっ、やっぱこんなのラグア様じゃなきゃ制御できねーよっ!!セリー、頼むから死ぬなよっ!!」
ライナーは叫んだ。
暴走…
旧モデル特別仕様のラグアの分体は、現在、不滅の帝の無限分裂をはじめとした数多の帝級スキルを同時発動させていた。
それがいきなり入れ替わったらどうなるか…
突如、惑星を破壊しかねない程の大爆発が起こる。
〜
死んだ…
セリーはその大爆発を…というか目の前で真っ白になる光景を見た時に直感した。
わかってはいた。
心のどこかで自分とライナーでは格が違うということを…
ライナーはバカでいい加減なヤツだが、ああ見えてラグア様への忠誠心だけはある。
ライナーがラグア様の命令通りに、全力を尽くした結果がこれだ。
ライナーを追い詰めればこうなる事も考慮しておくべきだったのかも知れない。
だが、不思議と後悔はしていない。
むしろ清々しい気分だ。
ここまでやって、なお負ける…
それが示すのは自分とライナーの明確な差だ。
認めよう。
ライナー、お前が私達のリーダーだ。
そしてミグ様のスキルで生き返った時には全責任は自分がとろう。
当たり前だ。
そもそも私がしでかした事なのだから…
セリーは思った。
その時だ。
「はい、そこまでー。2人共やりすぎだよー?」
その緊張感の一切ない、この場にはあまりにも不釣り合いな声と同時に爆発は掻き消えるのだった。




