第537話古代アルムス侵略戦19
無限分裂の分体達と幻惑の帝による半実体の幻覚…
互いに大量召喚したのだが、どちらが強いのかは考えるまでもない。
結果が全てを物語っていた。
ライナーの幻覚は次々に消滅させられる…
当たり前だ。
半実体とはいえ幻覚は幻覚だ。
ライナーの自由意思もなければ、帝級スキルもありはしない。
七大罪のバフ効果も本体のライナーにしか届かない。
そんな中、明らかに幻覚とは一線をかくした動きをしている存在がいた。
ライナーの本体である。
「ライナー、貴様はバカか?いやバカだったな?それではどれが本体か教えているようなものだぞ?」
セリーは言った。
次々と半実体のライナーの幻覚が消滅する中、空間帝と理の帝と光速の帝や剣帝、さらには幻惑の帝まで駆使しながら綺麗に避け続けるのは、誰がどうみても本体だった。
旧モデル特別仕様のラグアの分体もそれがわかっているのか、先程から本体に攻撃を集中させている。
「うるせー!!気が散るっ!!」
無論ライナーはそれどころではない。
何故なら…
「ベビーコア」
「メテオマシンガン」
「火刃」
「アクアレーザー」
「…」
先程から帝級スキルを解放した旧モデル特別仕様のラグアの分体の、惑星やライナー本人を殺してしまわない範囲でのヤバイ攻撃のオンパレードだからだ。
一撃でもまともに受けたら怯んだすきに、七大罪をやられてすぐさまゲームセットである。
ライナーは自分に攻撃してくるものよりも、七大罪を狙う分体を優先的に妨害していた。
ステータスでも帝級スキルでもライナーは圧倒的に不利な状況であった。
だが、それでも戦闘を…例えそれが防戦一方だとしても…成立させているのはライナーが、こと戦闘面においては他の追随を一切許さない類い稀なる天才であることを示していた。
「ちっ…あっ!!くそっ!!よしっ!!」
極限の集中力の中でライナーの感性は研ぎ澄まさる。
だがライナーはわかっていた。
こんな集中力いつまでも続くわけがないと…
もし一瞬の油断で七大罪がやられる様な事があれば、この綱渡りの拮抗は即座に崩れ去ると…
〜
一瞬にも無限にも感じるような激しい攻防…
だがここにきて、ついにライナーの集中力も切れ始める。
「「ベビーコア」」
四方から同時に灼熱の球体が襲いかかる。
現在は光速の帝で俊敏を∞にしている状態だが、それでも回避は間に合わない。
そう判断したライナーは残る2つの帝級スキルのうちの1つを切る。
「発動、重力帝、ゼログラビティ」
瞬間、重力の抵抗が一切なくなったライナーは神の俊敏を超える。
もっともそれでもライナーの左肩がベビーコアの被弾で抉れているところを見ると、本当にギリギリ回避できたというレベルである。
ライナーの頭には最後の帝級スキルがよぎる。
一か八か勝負するならあれしかない。
発動条件は厳しいが、それよりも問題がある。
たぶんアレ使ったらセリーが死ぬよな…
ライナーはそんな事を考えるのだった。




