第533話古代アルムス侵略戦15
「なあ、お前らが何がそんなに俺が気に入らねーのか知らないが、一応仲間だぞ?もうやめにしねーか?」
ライナーは言った。
それに対する他の四天王の反応は真っ二つにわかれた。
「セリー、もう諦めよう。コイツはアレだよ。ラグア様の言い方をかりるならチートってヤツだよ。はじめから勝てっこなかったんだよ?」
「セリー、フィリアの言う通りだ。アレは無理だ。格が違いすぎる」
フィリアとフィリムは上半身だけの状態になりながらそう言った。
フィリアは百鬼夜行により回復系の化け物を使えば…フィリムは不滅の帝を使えば真っ二つになった体など簡単に再生する事ができた。
だが、今すぐにそんな事をする意味などなかった。
2人はこの状況を見てわかっていた。
ライナーと自分達3人には決して埋められない差が存在する事を…
だが一名…頭ではわかっていてもわからない…いや、わかりたくない者がいた。
「ふざけるなっ!!私は認めん!!私は貴様なんかより優れているのだ!!」
セリーはその言葉と共に不滅の帝で即座に体を再生させた。
「貴様らも貴様らだ!!腰抜けに用はない!!消えろ!!発動、魔導帝、ダークマジックバインド!!」
セリーがそう叫ぶとフィリアとフィリムはセリーの作り出した亜空間牢獄へと閉じ込められる。
2人が万全の状態なら…いや、体の欠損と戦意の喪失…どちらか一方でも無ければこんな技は通用しなかった。
ただ単に拘束するマジックバインドとは違い、ダークマジックバインドは本来、遙か格下相手にしか通用しない技だった。
「ん?セリー?」
ライナーはセリーのその行動の意味がわからず、疑問符を浮かべた。
だが、そんなライナーとは対照的にセリーは落ち着きを取り戻す。
「ライナー、お前は強い。まさかはじめからフィリアとフィリムに手を回して3対1で挑んで手も足もでないとは思わなかった」
「買い被りすぎだ。お前らも充分…」
強い…ライナーのその言葉をセリーは言わせなかった。
言い終わらないうちにセリーは続ける。
「最後まで聞け。私達に対するそのなめた態度もお前の強さからすれば当然なのかも知れん。だから今回の戦いに私の勝ちはなくなった。おそらく引き分けだ」
「そうだな。このままお前がさがるなら俺はそれでも…」
ライナーがそう言いかけたが、それをセリーの笑い声がかき消す。
「何を勘違いしている?今からお前は私に完膚無きまでに叩きのめされる。だが安心していい。それは貴様の負けではない。今から私がやる事はいわばただの腹いせ…反則ギリギリの行為だ。ルールには一応触れていないが、私はおそらくラグア様から叱責を受ける。要はルールの穴というヤツだ。ライナー、お前は今から負ける。だが私はそれを理由にお前に勝ったなどと言うつもりはない。ライナー?ここは引き分けといこうか?」
セリーはそこまで言うと魔導帝を発動させ、亜空間を開く。
「待てっ!?嫌な予感がする。セリーお前何をする気…」
だが、ライナーの言葉は続かなかった。
何故ならライナーの口は驚愕のため、あんぐり開かれたからだ。
ライナーの目の前には亜空間から出てきた真っ白な髪と真っ赤な目をした少年が立っていたからだ。




