第520話古代アルムス侵略戦2
〜第三簡易ダミーエルライド城、玉座の間〜
「まずはセリーが動いたか…ねえ、どう思う?プロトフィリム」
その玉座に座る者…
ピンク色の髪と妖精族の羽を持つ女…
整った顔立ち…そして無邪気さを感じさせる喋り方…
女の名前はフィリア・アース…
神星帝ラグア・エルライド・イグロシアルの最高幹部にして四天王の1人だ。
「フィリア様、それは私ごときが判断する事ではございません。私は偉大なるラグア様の最高幹部である四天王フィリア様の命令に従うだけです」
プロトフィリムは答えた。
フィリアへそのプロトフィリムの答えが気に入らなかったのか、若干不機嫌になる。
「…ふうん、フィリムのクローンっていっても見た目だけでフィリムと違ってつまんないんだね?…まあいいや。一応能力だけは、フィリムのそれを受け継いでいるみたいだし、まあ頑張りなよ?とりあえずは動かなくていいや。一先ずはセリーの作戦に乗っかっとくよ。ライナーが動くまで待つよ」
フィリアは言った。
フィリアが今回の側近にプロトフィリムを選択したのは、能力の相性故だ。
自分がまだラグア様の配下になる前…王級だった魔王時代、フィリムと2人なら負けた事はなかった。
もっとも13魔王上位や上位の勇者達とは戦った事はなかったが…
ちなみに余談だがフィリムも側近にはフィリアのプロトクローンを選んでいた。
「申し訳ございません」
プロトフィリムは若干不機嫌になったフィリアに対してそう言った。
「まあ私はセリーと違ってそれくらいの事は気にしないけどね?まあライナーが動くまで暇だから、適当に雑談でもする?」
「はいっ、私でよければっ!!」
プロトフィリムがそう答えて雑談がスタートする…
まずはセリーの作戦に乗ってライナーには脱落してもらおう。
だけどセリー、次に脱落するのはお前だよ?
正々堂々、総統の椅子をかけて最終決戦をするのは私とフィリムだ。
フィリアは魔王らしい邪悪な笑みを浮かべるのだった。
〜
〜第四簡易ダミーエルライド城、玉座の間〜
その玉座に座るのは1人の女…
惑星国家イグロシアル…最高幹部にして四天王フィリム・アース。
進化した種族が違うとはいえ、姉であるフィリアと妹のフィリムは姉妹である。
見た目には通じる部分があった。
現在この部屋に他の者はいない。
側近として選んだプロトフィリアも、簡単に出撃準備をしておけという命令を出して既に退室している。
1人になったフィリムは考える。
思えば姉であるフィリアとは、生まれてからずっといつもいっしょだった。
生まれ育った森から引っ込み事案だった自分を連れ出してくれたのはフィリア…
数多の死闘の末、2人揃って魔王へと至れたのは、いつも隣で自分を気遣いながら戦ってくれたフィリアがいたからだ。
ラグア様に仕える事を提案したのもフィリアだ。
フィリアがいなかったら自分は今でも生まれた森に引きこもり、アルムスと運命を共にしていただろう。
そんなフィリアが考えている事はだいたいわかる。
何しろずっといっしょにいるのだ。
そして今回に至っては自分も同じ考えだ。
玉座に座るフィリムは呟く。
「まずはライナーを潰して、次はセリーだ。フィリア…お前には本当に感謝しても仕切れない。だからだからこそ…」
フィリムはそこで、一度言葉を切る。
「お前に勝つ。それがお前の妹としてできる最大の恩返しだからな」
フィリムはここにはいない姉に向けて、そう言ったのだった。




