第514話イグロシアル大使2
「へえ。カティアちゃんにシュドレ君か覚えおくわ。てかイグロシアルって鋭治のところだと、星王以上の家名って言うか星名だったかしら?」
姉ちゃんはカティア達の方を向きながら俺の方に視線だけ向けるとそう言った。
「ああ、そもそも今は星王って呼ばれてる連中はそのほとんどが元々俺の配下じゃねー。まあ今でも仲間には変わりないが、配下かって言われると微妙な連中がほとんどだ。そこにいるカティアも俺が転生してからはじめてできた友人だしな?」
俺はそう答える。
「ふうん………まあいいわ。でもイグロシアルって星名はいいわね。ねえ鋭治?鋭治の姉って事であたしも名乗っていい?」
「ああ、構わないぞ?」
「ならこれからはリオーナ・ミュールゼル・イグロシアルと…そう名乗るわ」
リオーナは言った。
リオーナには見えていた。
カティアやシュドレが、ラグア…自分の弟の事をよく思っていない事を…
リオーナの最初の言葉の間は、その感情を読みとった上で、弟がカティアを友人と言ったからだった。
だが、リオーナはその事を追求しなかった。
何故ならそれと同時に2人の感情には弟に対する絶対的な恐怖を感じたからだ。
恐怖は生物の根源…
ここで自分が追求して2人を消すのは簡単な事…
自分は鋭治からそれだけの信頼はされているのは自負している。
だがそれでは面白くない。
恐怖は利用してこそ価値がある。
おそらく鋭治はあの2人にまともに読心を使った事がないのだろう。
前の鋭治からすると考えられないが、あの頃の鋭治は長い逃亡生活の影響で全てにおいて疑心暗鬼だった。
今の鋭治は昔…
まだ指名手配される前の鋭治に戻っている。
鋭治はあたしやクソ兄貴といっしょで壊れてるけど、その本質は臆病でけっこう純粋だったりする。
特にあのカティアって子
鋭治がはじめてできた友人だとあたしに紹介したあの子…
本人の意思はともかく鋭治の口ぶりを聞く限り、鋭治はあの子をエリスっていう鋭治の配下とは別の意味で信頼している。
話がそれた…
あたしが言いたいのはあの2人には…特にカティアには利用価値があると言う事だ。
勘違いしてもらっては困るから言っておくが、これは誰でもない鋭治の為である。
鋭治が作り出す理想郷…
優しい鋭治の事だからそこにはあたしも入っているはずだ。
鋭治はクソ兄貴と違ってバカではない。
だが鋭治はけっこう抜けているところがある。
やればできる子なのに…
いいわ。
鋭治の理想郷を作る為…
鋭治に足りないものはあたしが補ってあげる。
もちろんあたし自身の為にもね?
リオーナはそんな事を考えながらカティアとシュドレを見据える。
「さて、カティアちゃんとシュドレ君には後で個人的に話をしたいわ。それはそうと…」
リオーナはそこで一度言葉を切る。
「2人にはあたしの惑星でイグロシアル大使をやってもらいたいのよ」
リオーナは言ったのだった。




