第495話姉の影9
「あー、その話か。いろいろ方法があるが、一番簡単なのは他のオリジンゴッドを倒せばいい。まあ、他にもいくつかあるがな?」
俺は言った。
「あたしの知っているオリジンゴッドは…あの最高神…そしてその配下…最高神1人相手だとして、搦め手を使っても勝率は2割以下…あたしには無理ね」
姉ちゃんは呟いた。
実際のところ、ミュールゼルのある宇宙の最高神の神格エネルギーは初期オリジンゴッドの4倍…
つまりリオーナの神格エネルギーのそれこそ4倍である。
そのような相当な格上な存在を相手に搦め手を使うとはいえ、1割強の勝率があると断言できるのは、リオーナがリオーナたる由縁である。
「それは後で詳しく聞くとして、鋭治はこの宇宙で何をするつもりなの?」
今度は姉ちゃんが俺にそう聞いた。
「ああ、簡単に言うとこの宇宙を喰う。ついでにどうせ抵抗するだろうからこの宇宙の最高神は先に叩き潰す」
俺のその言葉に姉ちゃんは目を見開く。
その驚き方は先程よりも大きい。
俺は続ける。
「姉ちゃん、オリジンゴッドには先がある。具体的にはアラウザルゴッドってヤツだが、今の俺はそれだ。まあ、アラウザルゴッドの中じゃ多分俺が一番格下だろうがな?」
俺のその言葉に姉ちゃんは少し考えるそぶりを見せてから言う。
「…なるほどね。アラウザルゴッドか…ねえ、鋭治。お願いがあるんだけど?」
「あ?なんだ改まって?俺が今まで姉ちゃんの頼みを断った事があるか?」
俺は言った。
姉であり育ての親でもある、姉ちゃんの頼みを断った事は今まで一度もなかった。
かつて姉ちゃんが、自身の旦那を殺してほしいと言う頼みも含めて…
「…そうね。鋭治は家族には優しい子だもんね。あたしの頼みは大した事じゃないわ。今回の鋭治のこの宇宙での戦いに協力させてほしいの」
姉ちゃんは言った。
「ああ、それはもちろん大歓迎だが…」
俺はそこで一度言葉を切る。
「…姉ちゃんの目的はなんだ?」
もし、姉ちゃんを知らない人間なら善意で協力してくれたと考えるだろう。
だが、姉ちゃんが善意で協力してくれるのは、本当に俺がヤバイ時だけだ。
今回の様な勝ち確みたいな、この宇宙の最高神との戦いでは、姉ちゃんは絶対に善意で協力などしない。
目的があるはず…
「何言ってるの?あたしは可愛い弟との再会を…」
「真面目にやれ。ガキの頃から何年の付き合いだと思ってる?別に姉ちゃんの目的を聞いたところで俺が断らないのは知ってるだろーが?」
姉ちゃんが言い終わらないうちに俺は言った。
俺の言葉に姉ちゃんは一瞬の沈黙の後、やがてフッと笑う。
「全く本当にあんたは変わらないわね…あたしのリップサービスってけっこう人気あるのよ?」
「それは俺にはいらねーよ。で?」
俺は言った。
姉ちゃんは俺と違って必要に迫られない限り殺しはしない。
その本質は最悪の結婚詐欺師だ。
俺は姉ちゃんの話術がまだ稚拙な頃から知っている。
姉ちゃんの嘘は、なんとなくだがわかる。
「…やっぱりあんたには通用しないか…。目的?というかあたしが欲しいのは…この宇宙の最高神ペテルワッカスの神格エネルギー…これでいい?」
姉ちゃんは言ったのだった。




