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第493話姉の影7


「そうくると思ったわよ。でも…」


そこで姉ちゃんの言葉が止まる。

姉ちゃんが何をしたのかと言えば、俺に読心を使おうとして失敗したのだ。


これは俺と姉ちゃんの神格エネルギーの差からすれば当然だが、姉ちゃんは基本的に読心を使わなくても他者の考えを読む事ができる。

その様な事をする必要がないのだ。

何故だ?

俺は思った。


俺の疑問…

そこに関しては今度はしっかりと読み取った姉ちゃんは言う。


「鋭治、悪いけどあたしの能力は完璧じゃないの。他人の考えが読める…前世のあたしは確かにそう言ったわ。でも実際はそこまで精度の高いものじゃない。瞳や言動からわかる感情の起伏…そこから更にその人物の性格や過去の行動理念などから、相手の考えのパターンはある程度読める…そしてそれに対する対抗策を割り出す。読心とは違ってそのまま読めるわけじゃない。まあ、あたしの能力でわかったのはせいぜい、鋭治があたしの想像もつかない様な、とんでもない力や能力を持っている事かしら?」


「さすが姉ちゃんだな…」


俺は言いながら抑えていた力を解放した。


その瞬間吹き荒れるのはアラウザルゴッドの…

実に初期オリジンゴッドの約49倍の圧倒的な神格エネルギーの嵐だ。


そんな俺の姿に姉ちゃんは軽く目を見開く。


「それはこっちのセリフよ。ここまでとは思ってなかったけどさすが鋭治ね」


「…もう少し驚くと思ってたんだけどな?」


俺は軽く目を見開いた程度で大して驚いて無さそうな姉ちゃんにそう言った。


「ふふっ、十分驚いてるわよ?ただ同時に鋭治ならおかしくないって気持ちもあるのよ?」


「…買い被り過ぎだ」


俺は言った。


姉ちゃんの俺を見る目に浮かぶのは、俺に対する全幅の信頼だ。

姉ちゃんは姉であると同時に、蒸発した親の代わりにガキだった俺を育ててくれた母でもある。

つまり…とんだ親バカだ。

兄ちゃん?

その頃は絶賛懲役中です。


「そんな事ないわよ。クソ兄貴やあたしなんかよりあんたは優秀よ?あんたの殺しだってそう。クソ兄貴と違って頭使うし、あたしと違って正面からでもいけるし?」


「俺は中途半端なだけだ。力じゃ兄ちゃんには勝てないし、頭じゃ姉ちゃんには勝てないしな?」


「どっちか片方が壊滅的なあたし達より全然マシだと思うけど?」


姉ちゃんは言った。


姉ちゃんの殺しは…

と言うか前世の頃から姉ちゃんが計画した殺人計画は完璧だった。

薬品のスペシャリストである姉ちゃんは、基本的に毒殺を得意とする。

その知識は専門家も真っ青だ。

俺も姉ちゃんに頼まれた時に、一度だけ姉ちゃんの旦那を殺すのを手伝った事があるが、そもそも死因は病死で事件にすらならなかった上に、どうゆうわけか俺も姉ちゃんも完璧なアリバイが用意されていた。

二重三重に張り巡らされた用意周到な計画的な殺人…

それが姉ちゃんの殺しのスタイルだ。

同時に姉ちゃんは俺と違って無駄な殺しをしない。

それらが恐らく俺が死刑になり、姉ちゃんが捕まってすらいない理由だろう。

まあそれは今はいいか。


「姉ちゃん…昔話は後でゆっくりやろうぜ?もう一回言うが俺のところにこないか?」


俺は姉ちゃんに向かってもう一度言ったのだった。

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