第491話姉の影5
「ちっ」
俺は目の前で失神した受付嬢に舌打ちをして、ギルドの職員達がいる方向に向き直る。
「で?誰がSランクになる方法を教えてくれるんだ?」
俺は言った。
ギルド職員達の反応は様々だ。
「おい誰かなんとかしろよ…」
「いや、ギルマスであれだぞ?無理決まって…」
「おいっ!!冒険者っ!!国の一大事だっ!!アイツを…」
俺はもう一度ため息をつく。
「もういいや。姉ちゃんには自分で会う事にする。お前らは用済みだ」
俺は言いながら千手観音モードを展開する。
「おいっ…コイツ人間じゃねーぞ…」
「襲撃だ。すぐに本部の方に報告を…」
周りがざわつきはじめたその時だ。
「その必要はないわ。あたしが自分で来たからね?」
唐突に転移の気配がして、そこには絶世の美女…
整形を繰り返し、永遠の美を保ち続ける長年見慣れた顔…
その人物は俺の前に転移してくる。
その場にいた俺達を除く全ての存在はその場に跪く。
「あたしの国で好き勝手やってくれたようね?ねぇ?死ぬ覚悟できてるわよね?ねぇ?」
放たれるオリジンゴッドの殺気…
俺とエリスを除いた面々は揃ってガタガタ震え出した。
そんな中俺は1人笑う。
「くくくっ、変わらねーな?姉ちゃんは…」
「は?」
姉ちゃんの殺気が急に鳴りを潜め、理解できないと言わんばかりの表情を浮かべる。
「あ?もっと喜べよな?可愛い弟の鋭治がはるばる別の宇宙から迎えに来たんだからよ?」
今度は姉ちゃんの表情は驚愕に変わるが、姉ちゃんはすぐに立て直す。
さすが姉ちゃんだ。
「鋭治?いや、そんなはずは…でもその話し方…」
姉ちゃんは半信半疑のようだ。
ここで俺は1つ切り札を切る。
失敗すればぶっ飛ばされるが、確実に俺だと言う証明にはなる。
俺は言う。
「あ、そういや姉ちゃんに会ったら謝ろうと思ってたんだ。姉ちゃんと兄ちゃんがパクられた後、床下の姉ちゃんの300万…使ったの実は俺だ。…わるかった」
俺は言った。
「鋭治…!?」
それは最悪の姉弟の宇宙を超えた再会の瞬間だった。
〜
俺と姉ちゃんは、お互いをお互いだと認識すると別の場所に転移した。
ここが姉ちゃんの居城で玉座の間らしい。
ちなみにエリス達は部屋の外に待たせている。
「じゃー、改めてあたしは三島莉緒那あらため、世界連合ミュールゼル、初代皇帝リオーナ・ミュールゼルよ」
姉ちゃんはそう俺に名乗った。
「じゃー俺も…俺は三島鋭治あらため、惑星国家イグロシアル、神星帝ラグア・エルライド・イグロシアルだ」
こうして俺達、姉弟はお互いに現在の名を名乗るのだった。




