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閑話とある結婚詐欺師の話


その日城の主、リオーナ・ミュールゼルは部下からの報告を聞いていた。


「オロルー国の冒険者ギルドに暴漢?なめてんの?そんなのあたしに通す報告じゃないでしょ?ねぇ死にたいの?ねぇ?ねぇ?」


見た目は他の追随を一切許さない絶世の美女…

だが頂点に立った事により、隠す気のなくなった凶悪性はラグアそっくり…いや、ラグアとリーゼの中間に位置するような…そんなイメージが似合う。


そんな美女の仮面を被った、死の象徴に部下の男は冷や汗をかきながらも報告を続ける。


「それがオロルー国のギルドマスターも瞬殺されてしまい…」


そこまで言いかけた段階ではじめてリオーナは興味を持つ。


「へぇ。そいつちょっとあってみたくなったわ」


リオーナは呟いた。




彼女…

前世の最初の名前は三島莉緒那の最後は壮絶だった。

享年83歳…

弟、日本国内最悪の連続殺人鬼…三島鋭治の死刑が執行されてから30年以上後の事だ。


読み違えた…

彼女の人生最大の後悔はそこだ。

彼女は歳をとった。

いくら度重なる整形手術により見た目だけは完璧な20代でも、脳の老化まではどうにもならなかった。


死因は腹に爆弾を巻いた元旦那の親族による自爆テロ…

数十人からいる彼女の鵜飼のSP達を突破し、自分に危害を加える方法は限られていた。

爆発の瞬間、彼女が思った事は死に対する恐怖でも過去に殺した者達に対する懺悔でもなかった。


老いたなー


ただそれだけだった。

昔の彼女なら…

こんな状況になる前に、不穏な空気を察し、この元旦那の親族に取り入るなり、始末するなりなんらかの対策をしていたはずだ。


「澪さんっ!?しっかりしてくださいっ!!澪さんっ」


澪という名前は現在の彼女が名乗っている名前だった。

彼女もまた、弟と同様に何度も名を変える人生だった。

薄れゆく意識の中で彼女の耳には、叫ぶSPの声だけがこだました。




正直ミュールゼルに転生するまでは、こんな事が起きるなんてまるっきり信じていなかった。


固有スキル、毒操…


それが彼女がこのミュールゼルに転生した時に、神からもらったスキルだ。

彼女がそのスキルを使って、このミュールゼルでものし上がる事は、日本でやってのけた事に比べれば遥かに簡単だった。


ぬるい…

中途半端にスキルなんてものがあるから考える力が失われる。

転生者だか召喚者だか知らないけどぬるすぎる…

アイツらはこれをゲームか何かだと思ってるのかしら?

まあ、弟やクソ兄貴が相手ならこう上手くはいかなかったでしょうけど…


彼女はかつての家族を思いながらそんな事を考えていると、部屋にノックの音が響く。


「入って」


思い出に馳せている思考を邪魔された事に、若干の苛立ちを覚えながら、彼女は言ったのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] スキルもギフトも無い、地球の人工的な技術で80代で20代の美貌を保つってよく良く考えれば普通にヤバいですね…
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