第484話神星帝
「申し訳ございませんっ!!ラグア様のご意志を読み違えあの様な発言を…この度の罰はいかなるものでも…」
星帝会議の終了後、玉座の間の俺の前には土下座するエリスだけが残っている。
くそっ…
リーゼのヤツ…
俺がエリスに甘いのも折り込み済みか…
こりゃマジで俺の負けだな。
俺はため息をついてから言う。
「気にするなエリス。あれは仕方ない」
俺も読心を使ったにも関わらずボコボコにされたからな?
と言う言葉を飲みこみながら俺は言った。
「ですが…私はあろう事か…ラグア様のご意志を無視し…」
もはやエリスは涙目だ。
〜
うん、全部アイツのせいだ。
あの後リーゼは俺にいくつかの事項を認めさせた。
一つ目はリーゼの第一星帝就任…
具体的にはこれから四天王達に侵略させる古代アルムスの…
二つ目はウリンの技術によるクローンの量産…
プロトクローンではない、リーゼの弟や妹達の…
これはこれから支配下におく惑星の星帝候補としてだ。
そして最後に三つ目だが…
いくら精神的にリーゼにボコボコにされた後だとは言え、これを認めたのはさすがに不味かったかと思いはじめている。
話していなかったかも知れないが、俺とエリスはこれから別宇宙に向かって飛ぶ。
目的はオリジンゴッドを狩る事による神格エネルギーの確保…
新たな惑星の支配による、領土の拡大…
更には宙喰により宇宙を糧に神格エネルギーの大幅強化…
こんなところだ。
そしてリーゼが俺に何を認めさせたかと言うと…
今回俺が留守にしている間の俺の全権代理人…
うん、これは確実にやっちまったわ…
今から取り消しとかできねーかな…?
とまあ、何故ここまで譲ったかと言うと…
これが最後だからだ。
今まで俺はいくら自分の娘だからってアイツを甘やかし過ぎた。
結果はこれ…
地頭はいいが、暴走すると未来予知のごとき交渉術で俺の読心すら打ち負かす…
それが今のリーゼだ。
もう次はねえよ。
これで終わりだ。
今回のこれは、俺が口でアイツを言い負かせるかの実験だった。
そして結果はこの様だ。
なら…
口で言ってもわからねーなら、次は力ずくだ。
虐待だなんて騒ぐんじゃねーぞ?
子育てなんかした事はないが、たぶん愛のある教育ってヤツだ。
俺はそんな事を考える。
〜
「重ね重ね本当に申し訳ございません。ラグア様の貴重な時間を私などの為に…」
「いや、終わんねーよ。そのくだりもうやめようぜ?」
エリスが言い終わらないうちに俺は言った。
エリスのフォローは地味に時間がかかった。
その時、玉座の間に1人の人物が入ってくる。
俺はその人物に言う。
「よお宙帝。どうした?」
俺のふざけた言い方にウルドナートは露骨に顔をしかめる。
「ラグアさんも人の事言えないよ?神星帝サマ?」
ウルドナートは俺にそう嫌味を返した。
「リーゼの口車に乗せられて空っぽの空間の支配者にされたお前よりはマシだよ。でどうした?」
「本当にあの子ラグアさんより怖いよ…と言うかあんなのを、曲がりなりにも手懐けてるラグアさんも異常だよ…」
ウルドナートはそう言ってから本題に入る。
「ラグアさんさ。別の宇宙に行くんでしょ?悪いけどそれさ、もうちょっと待ってくれないかな?」
ウルドナートはそこで1度言葉を切る。
「ラピロア…つまりはイナゴの王の配下に、恐ろしい成長速度のヤバイヤツが入ったらしいんだ。なんでもそいつは動きに制限がかかるのを嫌い、ラピロアに白神柱なる元神柱とは別の部隊を作らせるほどの実力と危険度を合わせ持つらしい。そんな時にラグアさんが側近といっしょに抜けるのはちょっと…」
ウルドナートは言った。
俺はそう言えばラピロアの事を、ウルドナートに全く話していなかった事を思い至るのだった。




