第455話プロトクローンの処遇
エリスは俺の命令から僅かな時間で帰ってきた。
2人のプロトクローンを連れて…
「クカカッ、にしてもお前…」
「悪い、エルミナ、ちょっと待て。エリスが戻った」
俺はそうエルミナに一言断りを入れてエリスに向き直る。
話をぶった斬られたエルミナは大して不機嫌そうでもない。
まあかなりどうでもいい話をしてたしな?
俺は言う。
「エリス戻ったか。気配が消えたって事は初代ラグア達は殺したって事だよな?それでそいつらは連れてきたのか?」
「はっ、ラグア様のご命令どうり初代ラグアとソドム・グラファルは排除致しました」
エリスはそう言って俺の前に跪く姿勢をとる。
俺は改めて生き残ったプロトクローン2人に目を向ける。
エリスが連れてきたって事は最低でも反乱の目はないって事だよな?
だが、フィームの一件もあるしコイツらが今後使いものになるかは正直わからんがな?
そういえばフィームは…
ああ、アルムスといっしょに俺が吹き飛ばしちまったな。
まあどうでもいいが。
俺はそんな事を考える。
俺はプロトクローン2人に向かって言う。
「で?お前らはこれからどうしたい?」
俺のその言葉にはちょっとした確認が込められていた。
もしコイツらがフィームの様になるなら全体の士気を下げる可能性がある。
エリスには悪いが、何か理由をつけて消さなければならない。
俺の質問に跪いたプロトセリーは代表して答える。
「はっ、偉大なるラグア様からお言葉をいただけるなど夢の様でございます。この度の失態、本当に申し訳ございませんでした。私達は叶うならこれからもラグア様にお仕え致したいと考えております」
失態?
なんのことだ?
ああ、リーゼの待機と包囲命令の事か。
いや、あんなのもはや命令じゃねーだろ。
俺がアイツらの立場でもそんな命令聞かねーわ。
だってあのままあそこにいたら死ぬし。
戦った結果死ぬならまだしも、そんな犬死みたいな命令をマジで遂行するヤツ…
………なんか俺の配下にはけっこういそうな気がするぞ…
まあそこは俺がアホな命令を出さない様に、気をつけるしかないが…
もうアイツらの狂信は諦めている。
俺は言う。
「そうか。それなら落ち着いたら名をやるからこれからも頼んだぞ?」
「「はっ、光栄にございますっ!!」」
プロトセリーとプロトフィリアは跪いた姿勢のまま興奮した様子で答えた。
名を与える。
つまりプロトクローンにとっては幹部入りだ。
コイツらは別段何か手柄をたてた訳じゃない。
なのに何故幹部入りさせるか?
それは…
「まあ、さすがに忘れてて殺しかけたのはいくら俺でも同情するしな?」
と言うわけだ。
俺は森羅万象に消えていく2人が去った後にそう呟いた。
余談だが、領域展開が発動しているにも関わらずプロトセリー達が消滅しなかったのは、まだ初期段階だからだ。
最後のカウントダウンがはじまるまでは一応は安全だ。
まあ、やろうと思えばエリローズの意思でいつでも消えてなくなるがな…
俺はそんな事を考える。
さて、エリスも戻ったところでこれまで放置していた概念をチェックするとしよう。
ちょうどテオレームやエリスもいるし、そっちもついでにやっとくか。
俺はそう思って鑑定に意識をさくのだった。




