第448話エルミナの勧誘
「次にデメリットだが…ほとんどねーな?」
エルミナは言った。
「は?」
俺は思わずそう聞き返してしまった。
今の俺はさぞかしまのぬけた顔をしているのだろう。
「よくも悪くもあの方は適当だからな?まともな命令なんてほとんどありはしねーよ。せいぜい新たなアラウザルゴッドが生まれた今回みてーな場合ぐらいだな?まあ、それはオレみてーなアラウザルゴッドだけの特権だったりもするが、オレはけっこう自由にやってるぜ?」
エルミナは俺が何も言わないのを確認すると更に続ける。
「強いて言うデメリットは元神柱…他のラピロア様の配下に手を出せなくなる事ぐらいか?さすがにラピロア様やオレ以外に手を出すのはやめろよ?アイツら弱えーから死んじまうからな?」
「………なんだそれ?」
俺は完全に呆れ果ててそう呟いた。
当たり前だ。
さすがに味方を殺しまくる配下なんかそれはもう配下じゃねー。
話を聞く限りかなりの好条件な気がするが、返事をするのは今じゃない。
俺は思った。
「まあ、返事はラピロア様に会ってからでも構わねー。それにはまずお前のやる事を済ませよ?この宇宙消すんだろ?」
エルミナは言った。
「読心か。一方的に心を読まれるってのは久々だが、やっぱうぜーな。まあいいや。エリローズ、出てこい」
俺はそう言って森羅万象を発動させる。
「ラグア様。私を呼ぶと言う事は邪魔者は全て消したと…」
森羅万象から出てきたエリローズの言葉はそこで止まる。
理由は当然…
「ラグア様…。まさか目的達成間近でこうなるとは…どうやらこれも運命の様ですね?」
エリローズはエルミナを見ながら言った。
なんか勝手に死を悟ってる…
「あ?今のところは敵じゃねーよ?むしろスカウトされてるし…あれだ。キャッチだ。キャッチ」
俺はエルミナを見ながら言った。
エルミナは俺の答えが面白かったのか笑いだす。
「くかかかっ!!おもしれー解釈するヤツだな?おい、オリジンゴッド。まあ概ねそいつの言う事は間違ってねーよ」
エルミナはエリローズに向き直ってそう言った。
「ではラグア様、予定通り宇宙を消しても?」
「ああ、やれ。後はお前の仕事だ」
俺は答えた。
「ああ、ついに私の夢が…ラグア様には感謝しても仕切れませんよ。では…」
エリローズがそう言いかけた時だ。
俺は気配を感じた。
王級が2体に神級が2体か。
王級はおそらくプロトクローンの生き残り…そして神級は初代ラグア達だな。
俺は森羅万象を発動させる。
「エリローズ、お前は予定通りやれ。エリス出番だ。初代ラグア達を殺れ。プロトクローンの生き残りをどうするかはお前に任せる」
「はっ」
エリスはそのまま初代ラグア達のところへ向かう。
気配の質から察するに、おそらくプロトクローンで生き残っているのは、プロトセリーとプロトフィリアだ。
フィームとプロトライナーは…まあアルムスの崩壊に巻き込まれて死んだってところだろう。
まあアイツらの代わりは、フィアナやセシルなど一部の突出した個体を除いていくらでもいる。
むしろ問題は生き残った方だ。
俺に不信感を持ったプロトクローンを本国に返すのはマズイ。
いざとなればエリスの支配の神でどうにでもなるが、そういう問題でもない。
わざわざ自分からクーデターの種をイグロシアルに招き入れるつもりもないしな?
俺がエリスに任せると言ったのは、その判断をエリスに任せたのだ。
そして俺が森羅万象から出したのは、エリスだけではない。
「ミグ、テオレーム。お前らはエリローズの護衛だ。今から宇宙消滅までの72時間、エリローズを守り通せ」
俺は言ったのだった。




