第444話孤高のアゼルメーテ2
ミグとアゼルメーテが出会ってから約1時間後…
ミグとアゼルメーテは思いの外打ち解けていた。
理由はアゼルメーテがミグに興味を持ったからだ。
「ほう?つまりお前はそのラグアとか言う者を倒しにはるばるやってきたと?」
アゼルメーテは無表情に抑揚のない声…
それこそまるで作り物の様にそう言った。
「うん。ラグアだけはあたしが殺す。最初はただの復讐だった。でも今はアイツを殺す事自体に意味があるんだとあたしは思うんだよね?アイツがいたからあたしはここまでこれた。アイツを殺す日を夢みて奔走した時間は時間にすると短いけど、あたしが生きてきた時間の中ですごく濃密で価値のあるものだった。理屈じゃないんだよ。あたしがアイツをこの手で殺した時…あたしは本当の意味で本来のあたしに戻れる」
アゼルメーテとミグが話をしだしてから約1時間…
側から見れば無表情で抑揚のない話し方にしか見えないアゼルメーテだが、その心は目まぐるしく動いていた。
コイツと話していると心が乱される。
昔の自分に似ているからか?
まだ全てに絶望する前の…
だからこそアゼルメーテはミグに問う。
「お前はそのラグアという者に何度も殺されたのだろう?なぜそう何度も挑む?なぜ諦めない?どうして追いかければ届くと信じられる?なぜだ?」
ミグはそんなアゼルメーテに対し、無邪気な顔には似合わないギラついた目を向ける。
「決まってるじゃん?それがあたしだからだよ?ラグアを殺す事…それが今のあたしの生きる意味で存在価値なんだよ?あっ、もちろん全部終わったらミュラっち達とのんびり暮らすってのもいいけどね?」
ミグは最後には笑顔でそう締めくくった。
だがそんなミグの言葉にアゼルメーテは考える。
そうか。
自分は生きる意味をとうに失っていたのか…
数えるのも面倒な程の宇宙を滅亡させ、それ以上の数のオリジンゴッドを殺して神格エネルギーをかき集め…
それでも届かないどころか、ラピロアの足元にも及ばないと悟った…
いや、悟らざるおえなかった時に…
「………お前と話していると昔を思い出す。この宇宙は、既に我が滅ぼしてしまった為何もないがゆっくりしていくといい。お前の事は気に入った。別の宇宙にオリジンゴッドを倒しに行くなら手配してやろう」
「わーっ、アゼルメーテっていい人なんだねー?」
くしくも古代ミグがラグアに向けて使った、いい人という言葉を現代ミグも使うのだが、それは誰知らぬ事である。
その後、ミグが別宇宙のオリジンゴッドから神格エネルギーをかき集め、ラグアに再び戦いを挑むのは、もう少し後の話だ。




