第390話リーゼとエリローズ2
「さて、こうして話すのは、はじめてですね?まずは自己紹介から…。私はエリローズ。この星では邪神などと呼ばれております。と言ってもそれもあと数日で終わりなんですけどね?」
エリローズは言った。
「じゃー。リーゼもとりあえず自己紹介しとくね?リーゼはリーゼ・エルライド・イグロシアル。説明はいらないよね?パパ…ラグア・エルライド・イグロシアルの1人娘だよ。まあ、そんなに焦らないで?リーゼの用件は簡単だからさ?」
「と言うと?」
「単刀直入に言うとエリローズ。この星をリーゼ達に頂戴」
エリローズはリーゼの言葉を聞いて薄く笑うと答える。
背中からは既に消滅の概念がちらついている。
「ふふふっ、リーゼ様。それは無理なご相談ですね。何せこの星…アルムスも含めて宇宙なのですから…」
側からみれば邪悪としか、言いようがないエリローズの雰囲気…
だがリーゼはそれに一切臆する事なく言う。
「だからさ?妥協してアルムス以外の宇宙にしてほしいんだけどダメかな?リーゼのお願いなんだけど?」
「無理なものは無理です。それにこれはあなたの父、ラグア様が言った事なんですよ?」
エリローズがそう言った瞬間、リーゼの雰囲気が変わる。
それは別に力が増したとかそうゆう事ではない。
力自体はまるで変わっていない。
王級下位程度の実力しか感じない。
にもかかわらずエリローズは背筋に冷たいものを感じた。
「ババアが…下手に出てりゃいい気になりやがって。勘違いしてんじゃねーよ?さっきはお願いと言ったがこれは強制なんだよっ!!」
明らかに雰囲気の変わったリーゼにエリローズは多少驚いたがそれだけだ。
エリローズは言う。
「はて?なんでしょう?よもやあなた如きが私とやり合うとでも?」
殺気…
それもオリジンゴッドの…
本来ならそんなものを正面から受ければまともに話せるはずもない。
だが…
「ババア。パパの殺気を受け続けたリーゼをそんなもので黙らせられるとでも?殺すなら殺せよ?やった瞬間、お前はパパに神格エネルギーを限界まで削られた上でただの器だ。当然お前の望みは叶わない。そしてリーゼはミグの黄泉の神で蘇り……ここまで言えばわかるよね?」
リーゼの雰囲気は急に元に戻った。
エリローズは何も答えない。
否、答えられない。
そもそも大半の事を力でねじ伏せる事ができるオリジンゴッドに駆引きなど向いているはずがなかった。
そしてリーゼは勝ち誇った様に満遍の笑みを浮かべると言う。
「ごめんねエリローズ。確かにパパはエリローズに宇宙を消滅させるって約束した。でもパパはリリスにはアルムスの一部をあげるって言っちゃったんだよね。リーゼは困ったよ。どっちにしてもパパは嘘つきになっちゃう。だからリーゼは考えたんだよ?パパがどっちの約束も守る唯一の方法をさ?」
エリローズはここでリーゼに読心を使う。
エリローズは知った。
そもそもリリスの話も今回のこの場面を作る為に、リーゼが自分で仕組んだ事を…
「………わかりました。私の負けです。アルムス以外の宇宙…その消滅で手を打ちましょう。それにしても長く生きてみるものですね。まさか生まれてはじめて戦う前から力では敵わないと思った相手の子供にも、まんまとハメられるとは…」
エリローズは自嘲気味にそう呟いたのだった。




