第370話功労者6
「それは…」
リリスは口ごもる。
リーゼはかなり大げさに言ったが、新体制から生まれた星王と言う立ち位置はどう考えてもリリスの望むところではない。
ここでリーゼは少し表情を柔らかくする。
「ふふっ、ごめんねリリス。いじわるしてさ、リーゼもわかるよ。そんなのはリリスが望んでないって事ぐらい。でも究極的には星王になるって事はそうゆう事だよ?」
俺はコロコロ変わるリーゼの表情を見ながら思う。
リーゼは俺の陣営の中では交渉ごとはかなり上手い。
俺の陣営の大半の連中は、ただの恐喝まがいの交渉しかできないがリーゼは違う。
こちらの失言…
具体的には、俺がリリスと同盟を組むと言った事を逆手にとって恫喝の材料にする。
例えば狂信組の俺の配下達なら、俺の意思とは無関係に俺が言った事は必ず実行しようとするだろう。
更にリーゼはそこから、絶妙な飴と鞭をバランスよく使いわける。
おそらくこの後リーゼは落としどころを提案する。
それはリリスにとっては途轍もなく甘い提案に聞こえるに違いない。
もし、次に何か交渉事があったらリーゼにやらせてもいいかもな。
リーゼは更に続ける。
「でもパパがああ言ったのに、何も無しっていうのはリリスが可愛そうだし、何よりパパには星帝としての矜持があるからそうゆうわけにはいかない。だからこれからリーゼが言うのは提案だから強制じゃない。嫌なら断ってもいいし、リーゼはその事でリリスに何かするつもりもないから安心して?」
リリスは黙って頷く。
もう完全にリーゼのペースだ。
「まず今現在リーゼがとりあえず預かってるリリスの配下、約1万は今日を持ってリリスに返そうと思う。そしてリリスの望み通り不可侵協定は結んであげる。ここまでいいかな?」
「そっそれは願ってもない事ですっ!!」
「更にその配下の1万とリリスに領土をあげようと思うんだけど、イグロシアルはパパの星だからここには不可侵地帯を作るつもりはない」
「では…」
リリスは話の流れが全く読めずに聞き返した。
「今回の戦いが終わればアレ…この時代のアルムスは丸ごと手に入る。パパはまだ何も言ってないし誰に任せるかも決まってないけど、そこの一部ならリリスにあげてもいいよ。それまではリリスは…まあ、客分って事で…なんの権力もないけど同時にリーゼ達の命令を聞く義務もない。これがリーゼからの提案だけどどうかな?」
リーゼの言葉にリリスは少し考えてから言う。
「そのお話謹んで受けさせていただきますっ!!」
だがリリスはこの時失念していた。
いや、リーゼの言葉の本当の意味に気づいたのは、リーゼを除いてラグアとフィアナぐらいだろう。
もし、古代アルムスが戦闘状態となれば否応なしに参戦する必要がある事…
そして、不可侵協定を結んだとは言え、その解消をやり玉にあげればリーゼ達の…具体的にはラグアの命令を聞く義務はなくても義理はある事に…
こうしてフィアナに続いてリリスの方の話も纏まるのだった。




