第368話功労者4
「ああ、俺も…」
リーゼの言葉に、俺もその程度の褒美じゃ足りないと思っていたところだと、言おうとしたのを直前で飲み込む。
忘れていた。
このクソガキは前科がある。
それもつい昨日やられたばかりだ。
「リーゼ。てめえわかってるよな?」
俺はリーゼが普通に喋れる程度に殺気を込めて言った。
これで暴挙に出るようなアホな事をしやがったらしばらく亜空間に閉じ込めるしかない。
反省しろって話だ。
「大丈夫だよ。ほんのささやかな。今のフィアナの望みにちょっとだけ特典をつけてあげるだけだよ」
「ならいいがな?」
俺がそう答えるのを確認してリーゼは言う。
「フィアナ、パパの特別仕様の分体だけどちょっとリーゼに預けてくれないかな?具体的にはウリンに改造してもらえる様にリーゼが頼むんだけどさ」
リーゼの言葉は俺の予想の斜め上だったが、ウリンは今ギフトの解析で忙しい。
計画が遅れる様な事は許容できない。
俺の言いたい事がわかったのかリーゼは言う。
「パパの言いたい事はなんとなくわかるけど、たぶんリーゼがやろうとしてる事はウリン本人がやらなくてもウリンに預けた助手でもできると思うよ?パパの分体の性能自体はいじらないし」
「では…一体…?」
話の流れが読めないのか、ここでフィアナが発言した。
「簡単に言うと、まずパパの分体を直接操る機能を取っ払う。それで替わりに簡単な命令なら受け付ける様にする。例えば…討伐、捕獲、守護、なんてどうかな?討伐はオートバトルモードと変わらない。捕獲は対象を捕獲する時に…。守護はフィアナが自分自身を守るのに使って。基本は守護は常時発動で討伐と捕獲を使いわければ大抵の状況には対応できると思う。たぶんそれぐらいなら、今日中に終わると思うけど、どうかな?」
リーゼの言葉に俺は少し考える。
確かそれなら王級クラスのフィアナでも十分に扱える。
まあ実験もかねてやってもいいか。
そのうち幹部やプロトクローン全員に…
いや、そこまでやるとクーデターが怖いな。
やっぱある程度信用できるヤツにだけにしよう。
2000体の特別仕様の俺の分体が暴れるなんて状況は神級クラス以外は対処できない。
今の俺の陣営には神級はそこそこいるが、ここぞと言う戦いにはおそらく総動員になる。
具体的にはクソジジイと本格的に構えた時には流石に手薄になる。
万が一、俺がイグロシアルに森羅万象を使う余裕がない様な状況で内部がそんな状況になったら完全に詰みだ。
やっぱ今回は特例にしよう。
フィアナは俺の方を伺う様に視線を向ける。
「ああ、お前の今回の働きはそれぐらいが妥当だ。これからも期待してるぞ?」
「はっ、ラグア様のご期待に添えるようこれからも精進して参ります!!」
フィアナは言った。
こうして二体ある俺の特別仕様の分体のうちの一体は、フィアナに渡される事となった。




