第359話ダミーエルライド王国防衛戦21
千手観音モードの無数の触手が初代ラグアに迫る。
「!?っ」
その瞬間、初代ラグアは目を見開いた。
ヤツが何に驚いたのか。
それは触手自体のスピードだろう。
今の俺の分体は、神格エネルギーこそないが、ステータスは下級魔神に匹敵する。
完全にナメてるアイツに交わし切るのは不可能だ。
俺は口角を吊り上げる。
俺の触手が初代ラグアに掠る。
「ちっ」
俺は舌打ちをした。
初代ラグアにダメージはない。
ダメージを受けたのはむしろ俺の触手の方だ。
掠った部分…
初代ラグアの神格エネルギーに触れた部分が完全に抉れている。
まあ元々今回の戦いは勝てるなんて思ってねーけどな?
今の攻撃も少しでも初代ラグアに冷や汗をかかせたならそれでいい。
俺は次の手をうつ。
「発動、帝級スキル、不滅の帝、無限分裂」
俺のその言葉で俺の体が次々と分裂をはじめる。
「………お前をカスと言ったのは撤回するぜ?ロロでさえ不滅の帝でまともに操れる分体は三体までだ。そこまでできて何故神に至れないのか不思議だぜ」
初代ラグアは言った。
初代ラグアの疑問の答えは実際は俺が神に至ってる事と俺の種族故の問題だ。
帝級スキル、不滅の帝…
例えそのスキルを持っていたとしても、帝級クラスのまま無限分裂ができる種族は限られる。
俺の様なアメーバ…
もしくはミグの様なスライム系の種族…
細胞が1つ1つそれぞれ独立した種族のみが、並列した意思の中での無限分裂を可能にする。
事実、セリーは不滅の帝を持っているにも関わらず、完全に制御できる分体は一体だけだ。
まあ、精度を落とせば増やせるだろうがな?
もっともそんな事は神に至った時点で関係ないがな?
神になるということは本体と分体に明確な線引きがされる。
そして種族の話で余談だが、おそらく初代ラグアの元の種族は魔族系統だろう。
薄い紫の髪…
黄色に光る瞳…
そして魔族特有の一般から見れば顔色が悪いと言える肌の色…
それを差し引いても顔自体は整ってると言えるだろう。
まあ、どうでもいいがな?
「いいぜ?認めてやるぜ。神じゃなくてもお前は強い。そう言えば名乗ってなかったな?俺様はラグア・ベルゼ・アルムス。この星の支配者だ。誇れ。神以外で俺様に神級スキルを使わせたのはお前がはじめてだぜ?発動、神級スキル、七曜の神」
その瞬間、初代ラグアを七色の光が包みこむ。
俺と初代ラグアの戦いは第2ラウンドを迎えようとしていた。




