第355話ダミーエルライド王国防衛戦17
テオレームが暫定ラグアと心中で呼び、疑いの目を向けている頃…
フィアナ達は必死だった。
フィアナはプロトセリーの通信を利用して味方に言う。
『外した…プロトリル、制御が甘すぎだよ』
『フィアナ様…やはり私には制御は特別仕様のラグア様の分体の制御は不可能かと…』
『不可能じゃない。やるんだよっ!!やらなきゃ待ってるのは死だけだよっ!!プロトセリー、ダミーエルライド王国に回してる通信は切っていいから魔導王を全力展開してプロトリルといっしょにステータスの制御に回って。リリスは展開した千手観音モードの制御だよっ!!』
フィアナはそう言ってプロトセリーの3つの通信のうちダミーエルライド王国に回している通信を切らせた。
今までプロトセリーは王級スキル、魔道王を使って2つの通信を同時に起動していた。
1つはダミーエルライド王国の味方に…
もう1つは味方同士の通信…
これは味方同士の連携の為だ。
そしてダミーエルライド王国の通信を切ったかわりにフィアナが指示を出したのは、特別仕様のラグアの分体の制御…
最初フィアナは妖精王から通信用の妖精を召喚して、プロトリルと2人で制御をしようとした。
結果はこの様だ。
まだ帝級スキルすら展開してない…それどころか千手観音モードもなしのただの純粋な攻撃すら、本来の力のほんの僅かしか引き出す事ができなかった。
この状態で全力展開は…
一応できる事はできる。
一瞬で特別仕様のラグア様の分体が宇宙の彼方に飛んでいく事になるが…
もちろんそれでは意味がない。
厳密に言えば本来の力を引き出す方法はあるにはあるが、それは最後の手段…
それは制御ではないし、討伐はできるだろうが捕獲は諦めなければならない。
フィアナは考えた。
「発動、帝級スキル、木星帝、虚無の帝」
テオレームの体を深緑のオーラが包みこみ、両腕からは禍々しい黒いオーラが放たれる
相手が帝級スキルを使ってきた。
ここからが本番だ。
フィアナは気を引き締める。
〜
戦闘がはじまる。
それはほんの数秒と呼べる僅かな時間だった。
その間にも帝級クラス同士の戦いは幾度となく、攻防を繰り返す。
特別仕様のラグアの分体は千手観音モードを使い、次々と攻撃を繰り出すが、やはり4人がかりでも完全に制御はできず、全てテオレームに避けられる。
逆にテオレームの攻撃は度々特別仕様のラグアの分体に命中するが、ステータスの差の為かかすり傷だ。
そんなものは不滅の帝の自動修復で一瞬で再生する。
マズイ…
4人で制御しても実力は拮抗…
これ以上時間をかけるわけにはいかない。
異変に気づいた初代ラグア達が戻れば作戦は失敗するのは確実だ。
かと言って帝級スキルを使うわけにはいかない。
今でさえまともに制御などできていないのに、そんなものを使えば自分達の脳は確実にショートする。
ここでテオレームを捕獲するのがベスト…
でも時間をかけすぎて全てを台無しにするのは最悪…
ラグア様が星帝襲名されたこの特別な日にそんな事になればラグア様にあわせる顔がない。
そんな事になるぐらいなら…
最後の手段を使う。
そう判断したフィアナの決断は早かった。
「オートバトルモード」
フィアナがそう言った瞬間、今まで虚ろな目をしていた特別仕様のラグアの分体が待機させているもう一体も含めて真っ赤に輝くのだった。




