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第353話ダミーエルライド王国防衛戦15


時は少し遡る。

プロトフィローラ達が持ち場を放棄し、敵前逃亡を開始した頃…


〜エルライド王国近郊、第2防衛ライン〜


フィアナ達は1人の男と向かい合っていた。


「なんだ?転移してきたところを見ると新手か?」


男…

三元魔テオレーム・クリムゾンは言った。


そんなテオレームにフィアナは答える。


「まあそんなところかな?はじめまして、私はフィアナ。プロトクローンにして偉大なる魔王ラグア・エルライド様…いや、星帝ラグア・エルライド・イグロシアル様の幹部の1人だよ」


フィアナはプロトセリーの通信を通して第2防衛ラインにきてからもダミーエルライド王国の情報は把握していた。


ラグア様の星帝襲名…

素晴らしい。

ならば自分にできる事はラグア様の…いや、偉大なる星帝ラグア・エルライド・イグロシアル様の餞になるように今回の作戦を成功させる事だ。


プロトフィローラ達の裏切りも予想の範囲内だ。

問題はない。

もっとも存在するだけで反乱の目を撒き散らす病原菌共を放置するつもりはない。

ヤツらの始末に帝級アンデットを使った事は決して過剰戦力ではない。

ラグア様に自分が認められる事も大事だ。

だが、それ以上に大事な事がある。

今日はラグア様が星帝を襲名された大切な記念日…

間違ってもこの大切な記念日に水を差す事などあってはならないのだから…

フィアナは思った。


「つまりラグアの名を語るヤツの手下か。それで?どうする?お前ごときが俺に勝てると思ってるのか?それともお前の両隣の白いヤツをけしかけて戦うか?」


テオレームは特別仕様のラグアの分体に目を向けて言った。


言いながらテオレームは考える。

フィアナとか言うヤツも他の雑魚も気にしなくていい。

所詮王級クラス…

相手になんかならない。

だが、あの虚ろな目をした白いヤツ2人は違う。

ヤツらは確実に帝級クラス…

ここまではわかる。

だが、自分より上なのか下なのかはまるでわからない。

それどころか、白いヤツ2人からはまるで生気を感じられない。

さすがに実力未知数の相手と戦うのは危険か。

そう判断したテオレームは、ここでとある力を使う事を決めた。




半神シーラ・ベルネイアが敵に回る事態を重くみた大魔王、ラグア・ベルゼ・アルムスはダミーエルライド王国に攻め込む前、三元魔全員に神託を渡そうとした。

なぜ今までそれをしなかったのかは、初代ラグア陣営の現在の状況が関係する。

現在、三元魔の関係は決して良好ではないが、実力自体は拮抗しバランスがとれていると言っていい。

だが、神託の真の力は鑑定なんかではない。

それは帝級スキルの譲渡…

倒した相手のスキルを自らのものにできるというイカれた能力…

おそらく三元魔に神託を付与すれば、近いうちに三元魔の中から最初に神へと至る者が現れる。

それがロロならまだいい。

中立派のロロなら一応はバランスはとれる。

だがもし、テオレームやソドムが最初に神へと至れば…

テオレームなら初代ラグアを殺して成り代わろうとするだろうし、ソドムなら様々な手段でエリローズやテオレームを追放しようとするだろう。

この中で一番最悪はテオレームが最初に神へと至る事だが、どちらにしろこの陣営は崩壊する。

それが今まで三元魔達に神託を渡さなかった理由だ。

だが、シーラが敵に…それもその上にシーラを超える存在がいる時点でそんな事は言ってられなくなった。

出し惜しみをして、もし三元魔が討たれたら本末転倒だ。

それはそれで近いうちに崩壊する。

大魔王ラグア・ベルゼ・アルムスの苦渋の決断だった。




そんな初代ラグアの葛藤を知ってか知らずかテオレームは神託を使うのだった。

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