第350話ダミーエルライド王国防衛戦12
「あたしのプロトクローンを?あまり気が進まないんだけど…」
ラグアの言葉にウリンは嫌そうな顔をしながら答えた。
当然だろう。
自分と同じ顔をした助手に囲まれながら、仕事がしたいと思うのは一部のナルシストだけだ。
「まあそう言うな。お前のプロトクローンならお前が一から知識を叩き込めば使えるレベルにはなるだろ?」
「確かに理論上はそうだけど…。プロトクローンには個体差があるし…」
プロトクローンには個体ごとに、かなりの個体差があるのは既に立証されていた。
「なら大量に作って使えるヤツだけお前の助手にしろよ。あぶれたヤツはこっちに回せ。適当に使う」
〜
ラグアとウリンのそのやりとりからプロトウリンは生まれた。
そして当然ながらここにいるプロトウリンは、ウリンの目から見て使えないと判断された者だった。
さらに協力すると言ったプロトウリンだが、オリジナルですら、固有スキルまでしか人工スキル以外は獲得していない以上、王級スキルなどあるはずがない。
現在プロトウリンが使えるのは…
「あたしのアンドロイド軍はいつでも出撃できるわよ?」
そんなプロトウリンの言葉にプロトフィローラは溜息を吐く。
量産型アンデットにすら劣るプロトウリンのアンドロイド軍など今さら無意味だ。
もっともそんなものしか作れないから、プロトウリンはウリンに見限られる事になったのだが…
「気持ちは嬉しいがそんなものは…」
使いものにならないとプロトフィローラが言おうとした時だ。
「プロトフィローラ、報告だ。第4防衛ラインが抜かれた。残りの量産型アンデットは全滅。プロトシオン、プロトシュドレ、プロトライナーは戦死した」
部屋の扉を乱暴に開け、入ってきたプロトフィリムは言った。
「………やってられるか。ラグア様には申し訳ないが、我はもはやあの女の出世の為の集団自殺に付き合うつもりはない。プロトフィリム、プロトウリン、残りのプロトクローンに伝えろ。生き残りたい者は我と共に来いと。我はここを捨てる」
それは明確な敵前逃亡行為だったが、プロトフィリムやプロトウリンもフィアナに対する不満は溜まっていた。
プロトフィローラを咎めるものはいなかった。
こうして、ダミーエルライド王国内ではプロトクローンによる分裂がはじまるのであった。




