第31話ドール伯爵邸にて
俺がミュンに半ば強制的に、不可侵条約を結ばされてから二ヶ月たった。
現在は、ドール伯爵邸の客室。
つまり自室にいる。
正直屈辱だ。
あのアバズレ近いうちにぶっ殺してやる。
今に見てやがれっ‼︎
俺は受けた恩はソッコー忘れるが、受けた屈辱は一生忘れないタイプだ。
エリローズ 、ミュン・ゾフィス、ついでに俺の精神崩壊の原因を作ったダレクスも俺の抹殺リストに入っている。
まあ、エリローズ は今の俺じゃ太刀打ちできないし、ミュンも殺すと他の魔王達に集団リンチされるから手は出せない。
ならば、ダレクスを殺すかと言えば、これもできない。
理由は簡単、今アイツを殺せば、俺の思い描いていた計画が全てオジャンになる。
俺にはあの伯爵と交渉した時からの、ある計画がある。
アリエルに王位を継承させる。
そこまでは、ダレクスと俺の目指すところは同じだ。
だが、その後アリエルをただのお飾りにして、実権は俺が握る。
ここまでが俺のエルライド王国での計画だ。
と言っても俺は、めんどくさい政治なんかやりたくないし、細かい事なふつうに人に任せる。
まあ、エリスを太閤にでもして、俺が方針だけ指示してやれば、アイツならうまくやってくれるだろう。
俺がモレストの町に戻ってからの一ヶ月、エリスは奴隷100人の洗脳をはじめている。
実際に使えるようになるには、もう少しかかるがそれが終わったら、パワーレベリングに連れて行ってもいい。
この二ヶ月、俺も遊んでいたわけではないが、MP無制限の補正をふんだんに利用して、偽造をかけ続けたにもかかわらず、偽造のレベルはまだ5だ。
どうもこのスキル、とんでもなく効率が悪いらしい。
まあ、誰も持ってないようなスキルだし、仕方ないのかも知れないが。
ちなみに偽造Level5でできる事はステータスの一桁代の数字の偽造。
つまりゴミだ。
平均ステータス、2億1000万の下一桁が0だろうと、9だろうと答えはどーでもいい。
そうゆう訳で(抹殺リストの内誰も殺せない事、偽造のレベルの上がりが悪い事)俺は今、ものすごく機嫌が悪い。
ダレクスなんかは、俺が殺気を撒き散らしてるせいか、必要最低限の会話しかしない。
(飯の前にあいさつだけした)
俺は自室で暇を持て余す。
ちなみに今日の生贄は、イライラしすぎて力が入り過ぎてもう殺してしまった。
そんな時だ。
俺の部屋にノックの音がしたのは。
「入れ」
俺は短く言う。
入ってきたのはエリスだった。
「ラグア様、お客様です。魔王ミュン・ゾフィス様の使者の方がお見えになっております。いかがされますか?」
一応、俺と同格の魔王と言うのもあってか、エリスはミュンの事をそう呼ぶ事にしたらしい。
ちなみに、エリスには今後のこの国での計画も、ゆくゆくは13魔王も皆殺しにする事も話してある。
それに対するエリスの答えは、
「志の高い偉大な主人に仕えられて、私は幸せです。」
だった。
もうとっくにエリスを殺すなんて、選択肢は消滅しているが、ここまで心酔されると悪い気はしない。
話が逸れたが、今は使者がきているらしい。
「通せ」
俺は、また短く一言そう告げる。
俺の言葉に次いで現れたのは、老紳士と言う言葉が似合いそうなジイさんだった。
「お初にお目にかかります。魔王ラグア様。私は魔王ミュン・ゾフィス様の下僕、ソリドと申します。」
ソリドは俺に跪くとそう名乗った。




