第288話滅亡と死神と獣王2
「あ?俺のおかげ?」
俺は聞き返した。
「そう。ラグアさんの森羅万象のおかげだね。ラグアさんが森羅万象をかけてくれたから僕はアンチステータスゾーンの影響を受けなかった。はっきり言ってアンチステータスゾーンは無敵に近いよ。発動した時点で一瞬とまではいかなくても、僅かな時間で全てのステータスを奪われるし、外部から入ったとしてもアンチステータスゾーンの中心までステータスを奪われずに辿り着く事なんか絶対に不可能だよ。でもね?ラグアさんが森羅万象を僕にかけた時、ふと思いついたんだ。森羅万象はアンチステータスゾーンの唯一の弱点なんじゃないかってね?待ってたよ。決定打を食らって完全に動きを止められたラグアさんをジジイがトドメを刺すこの瞬間を…まあ、そこまで引っ張っても僕の攻撃がジジイに届く頃には僕の力は下級神クラスにまで落ちてしまったけど…ジジイの脳天を吹き飛ばすにはそれでも十分過ぎたよ」
ウルドナートは満遍の笑みで言った。
つまりはウルドナートはジジイ…いや、ミグが俺にトドメを刺す一瞬を待っていたと…
そしてアンチステータスゾーンで完全に力が消える前にミグの頭部をぶっ飛ばして殺したと…
この場合コイツが殺したのはジジイじゃねーが、別に言う必要もないだろう。
コイツと敵対するのは絶対にマズイ…
何せミグを…いや、ジジイの体を吸収したウルドナートの力はエリローズと融合した俺の神格エネルギーを超える…
俺は極めて友好的に言う。
「ウルドナート。よくやった。お前のおかげだ」
「あははっ、ラグアさんがそんな事言うなんてもしかして宇宙の終わりかな?感謝したいのは僕の方だよ。ラグアさんのおかげであのクソジジイをぶち殺す機会に恵まれたのだから」
うん、これは絶対ジジイが実はミグでしたって言っちゃダメなヤツだ。
よし墓場まで持って行こう。
俺は心に誓った。
「つーかお前これからどうするんだ?まだゴミの処理が一匹残ってるが、そんなものは片手間に終わる。その後俺は少しやる事ができたが、お前も来るか?」
「いや、僕は自分の宇宙に帰るよ。いつでも来てよ。ラグアさんとエリローズさんならいつでも歓迎するよ。あれ?そういえばエリローズさんは?気配はなんとなく感じるけど…」
ウルドナートは言った。
「エリローズは…俺の中だよ。少しやる事って言うのはその事なんだけどな?」
「…そっか」
ウルドナートは俺の言葉でエリローズが死んだと思ったらしい。
まあ、間違いではないが正解でもない。
それをどうこうする方法は、既に俺の頭の中にはある。
「じゃあ、僕はこれで…ラグアさんも元気で」
「ああ、じゃーな」
こうしてウルドナートはアルムスから去って行ったのだった。




