第286話滅亡と死神2
「死ねやー!!」
俺の放った回し蹴りはミグに回避される。
ミグはその俺の軸足を払おうとするが、俺は蹴りの惰性で体を回転させてかわす。
クソがっ、当たらねー…
さっきから割と真面目にやってるのに、ミグは天性の勘だか知らないが全部回避される。
掴みにいって寝技に持ち込むか?
あれは技術の差がもろに出る。
俺はそう考えパンチのフェイントをいれてから飛びつき腕十字を仕掛ける。
バキッ
ミグの腕から鈍い音が響くが俺は嫌な予感がしてその場から跳ぶ。
直後肩に激痛が走る。
「ぐっ…」
肩を確認すると完全に抉れてる。
クソっ左肩が上がらねえ。
「あれー?右手がぶらぶらだよー。まあラグアも左手がぶらぶらみたいだからおそろいだねー」
「てめえ、痛み感じねーのかよ?」
「ん?痛いよ?でもね、ここであたしが負けるわけにはいかないんだよ。それが親友であり、恩人でもあるミュラっちの意見を無視してわがままを押し通したあたしの義務だよ?」
ミグはジジイの顔でニヤリと笑った。
クソっ、状況は五分五分か。
力はジジイの体を乗っ取ったミグが上…
技術は俺の方が遥かに上…
戦闘の直感と言うか才能というかはミグの方に若干の分があるようだが、これだけならまだ俺が有利なはずだった。
だが、アイツは訳のわからない胆力でその差を埋めやがった。
だが、まだ五分五分だ。
俺も決め手がないがミグもない。
おそらくこれからお互いが致命的なミスを犯すのを待つ泥試合になる。
俺がそんな事を考えていた時だ。
「なんじゃ?惑星がボロボロになっているから来てみれば、今まさに決戦の真っ最中と言うわけか。どうやら今度は間に合ったようじゃな?」
なんだこいつは?
俺は声がした方向を見据える。
たしかコイツ前にちっとだけ見た最後の転生者だっけか?
改めてマジマジ見ると見た目は若いのにまるで老人の様な気配がする。
まあ今はどうでもいいか。
俺はミグに向き直ろうとするが途中で止まる。
理由はその男の目だ。
殺人者…
と言っても俺と同類の狂気のこもった目ではない。
どこまで冷たい目と表現するのがいいだろう。
殺すと言う選択肢を含めて全てを受け入れたヤツの目だ。
前世だと軍人や殺し屋、そしてヤクザ…
死ぬ間際に見た記憶だと俺の死刑を担当した執行人もこんな目をしていた。
俺はこの男を警戒すべきと判断する。
「よお?確かお前は転生者だったよな?積もる話もあるだろうが、まずはコイツを片付けてからだ。俺のところには俺の他にも2人の転生者がいるから後で紹介する。まあ、しばらくそこで見てろよ?」
俺は男に向かって話しかける。
男が前世で何をやっていたかはわからないが、軍人や殺し屋なら最悪だ。
ステータスが封じられた今のアルムスでミグと2人同時に相手するなど冗談じゃねえ。
俺の発言はそう思っての発言だった。
「日本にいた頃、儂は色々な人間を見てきた。特に戦時中には平和な時代から考えれば悪魔としか言えない様な連中も数多くいた。だが…儂はこれまでお前ほど道徳が欠落している人間には会ったことがない。お前の国はまるでかつてのナチスドイツを見ている様だ。お前の居場所などどこにもない。歴史はお前の存在を認めない。お前はここで儂が討つ」
それは俺と最後の転生者レオンとの交渉が決裂した瞬間だった。




