第258話トルワ公国
「うーん、やっぱりしょぼいね」
「はい。ラグア様も価値がないと言っておられましたし…」
リーゼとセリーはトルワ公国にきた途端にそんなやりとりをする。
「まあ、別にいいんだけどね。今から50年ぐらい前、パパはミール村とかいう、ど田舎でエリスを拾って、ダレクスとかいう、貴族の私兵一万を文字通り皆殺しにして魔王になった。セリーはリーゼの言いたい事わかるよね?」
セリーはここに来てようやくリーゼの行動を理解する。
「でしたら…」
「うん。まずは未来のエリスを見つけようか。いずれリーゼの片腕になるんだからちゃんと選ばないと」
「…リーゼ様、我々では何か至らないところが…」
セリーは恐る恐るリーゼにそう聞こうとするが、リーゼはそれを途中で制す。
「いや、特別幹部以上のパパの配下達はみんな優秀だよ。特にセリー達、最高幹部に至っては文句のつけようがないよ」
「なら…」
セリーが何かを言い出す前にリーゼが口を挟む。
「でもね?パパの配下はあくまでパパの配下なんだよ。リーゼはリーゼのやり方でパパの力になる。それには力がいる。それもセリー達の様なパパからの借りものじゃない力が」
「はっ、リーゼ様のお心のままに」
セリーはその場に跪くのだった。
〜〜〜
時は少し遡る。
プロトセリー達がリリス陣営に斥候を送っている頃、エリス達は龍王星の大気圏の外にいた。
生物は普通宇宙空間では生きられない。
それはこの世界でも同じだ。
それでもスキルの補正により、王級、帝級ともなるとかなりの長時間宇宙空間でも活動できるようになる。
だが、ここにいるメンバーはフィリアを除いて全て神級クラス…
そのフィリアでさえ帝級クラス…
年単位の時間の活動には十分耐えられる。
もっとも大気圏の外でそこまでの長時間活動する予定などないのだが…
ここにいるメンバーはエリス、フィリア、シオン、フィローラ、バルトの5人…
もっともフィリアは戦闘に参加する予定はないが、シオンを使うにはフィリアを連れていかない訳にはいかなかった。
同様に神級クラスでも、カティアとシュドレを連れて行かなかったのはその為だ。
カティア達を連れていけば、フィリアといっしょにここに待機させる事になる。
その場合カティアはまずもたないだろうし、シュドレも作戦に時間制限がついてしまう。
もっとも融合を使えばその問題は解消されるが、現在動かせる戦力だけでもオーバーキルなぐらいだし、万が一にもエリスは、特に主人であるラグアの友人であり、特別王族でもあるカティアを危険に晒す訳にはいかなかった。
『さあ、フィローラ様、バルト様、準備はよろしいでしょうか?シオンもいいな?これよりラグア様のご命令を遂行する』
エリスは神通を使ってそう宣言したのだった。




