第255話アルムスクローンパニック8
プロトセリーはイグロシアルに転移する。
もちろん主人であるラグアに今回の報告をする為だ。
先程いた部屋にはプロトエリスとプロトライナーを待たせてある。
万が一、自分がいない間に戦闘になったとしてもたぶん大丈夫だろう。
「プロトセリーです。至急ラグア様にご相談がありますっ」
プロトセリーは城の中にいた幹部の一人に繋いでもらうべく言った。
「わかった。すぐに上に話を通す」
その幹部の男は城の奥へと消える。
〜数分後〜
出てきたのはセリーだった。
「お前がプロトセリーか。ちゃんと話すのははじめてだが私のクローンなだけあり本当に瓜二つだな」
セリーはプロトセリーを見回しながら言った。
それこそセリーの胸に輝く、最高幹部の証である背中から無数の触手を伸ばす人型のエンブレム…
それが無ければ見た目だけではセリーとプロトセリーを判断できる者は少ないだろう。
もっともある程度の実力を持つ者なら帝級と王級の圧倒的な力の差を感じる事ができるのだが…
「はっ、セリー様にお会いできて光栄にございます」
プロトセリーはセリーの前に跪く。
「しかし困ったな。ラグア様は現在地下にこもられている。私なら入る事も可能だが緊急時でない限りそういった事はするわけにはいかない。エリス様も今はいらっしゃらないし…」
セリーは言った。
その時だ。
「話は聞いたよ。ならリーゼがアルムスに降りるよ。リーゼの権限ならだいたいはなんとかできるし」
セリーが来たのと同じ方向から歩いて来る幼女は言った。
リーゼ・エルライド…
自分達と同じようにウリンに生み出されながら、自分達とは違い失敗作と呼ばれなかった存在…
プロトセリーのその敬意を示す目線に若干の嫉妬が混ざるのは仕方のない事なのだろう。
逆にセリーはと言うと嫉妬の感情などあるはずもなく、そこにあるのは純粋な上位者に対する敬意だった。
だが、リーゼの言葉に対しはいそうですかとは言えないのも、セリーの立場故だ。
セリーはその場に跪き言う。
「リーゼ様…それはさすがにラグア様に確認を…」
「パパが地下に入ったのついさっきだよ?セリーはパパが1時間や2時間であんな楽しい部屋から出てくると思ってるの?」
「それは…でしたらリーゼ様ならあの部屋に入っても…」
「…セリー、リーゼまであんな楽しいところに行ったらそれこそリーゼまでしばらく帰ってこなくなっちゃうよ?」
リーゼは若干呆れた様子で言った。
「ならばせめて、護衛として私が行く事を許可して下さい。万が一リーゼ様に何かあれば…」
「まあそれぐらいはいいよ。じゃあアルムスに行こうか。パパが生まれた星に」
リーゼは無邪気な笑みを浮かべながら言った。
こうしてイグロシアルからアルムスへと、更に二人の存在が降りて行ったのであった。




