第254話アルムスクローンパニック7
「何?和解?」
プロトセリーはリリスより送られてきた使者に聞き返す。
「はい我が主、魔王リリス・ヘヴン様が和議の席をと申しております」
罠か?
可能性は高い。
さすがに一度もまともにぶつからずに和議とは…
まあ、罠だとしたら戦力を分散するのは完全に悪手…
ここはこのまま三人でリリスの元に向かうのが得策。
プロトセリーはそう判断して言う。
「いいだろう。和議を受けよう。私達はこのまま三人で向かう。兵はここに待機させる」
「ではご案内します」
プロトセリー達は使者の後に続く。
〜
使者の後に続いてプロトセリーが部屋に入るとそこには既に1人の女が座っていた。
四枚一翼の黒い翼…
対象的な真っ白な髪の美少女…
おそらくあれが堕天魔王リリス・ヘヴンだろう。
その女は口を開く。
「魔王ラグア・エルライド殿の幹部の方とお見受けする。まずは座ってほしい」
「俺達はまだ…」
プロトセリーはプロトライナーが余計なことを言おうとしたのを制し席につく。
プロトライナーとプロトエリスもその後に続く。
プロトセリー達が席についたのを確認するとリリスは言う。
「まずは自己紹介をしよう。私は13魔王内序列第九位、魔王リリス・ヘヴンと言う。そちらは魔王ラグア・エルライド殿の幹部の方々とお見受けするが…」
一度プロトセリーにより制止されたので今度はプロトライナーは何も言わない。
プロトエリスも同じだ。
プロトセリーはリリスの質問を無視して、逆に質問を質問で返す。
「それで?和議の為の話合いだそうだが、つまりそれはこちらに対する降伏と受け取っていいのか?」
リリスの質問を無視したのはプロトセリーの意図的なものだった。
自分達が本当に幹部なのなら名乗ってもよかったのだが、今の自分達は幹部ですらない。
ある程度交渉がまとまるまでの間優位に進める為に、これは必要事項だった。
そんなプロトセリーの考えを知ってか知らずかリリスは言う。
「できれば同盟及び不戦協定という形にしてくれるとありがたいのだが…」
リリスの言葉にプロトセリーは考える。
同盟…
降伏ならともかく、これは幹部でもない自分達が一存で勝手に決められるものではない。
これは困った。
どうする?
そんな時声をあげたのはプロトライナーだ。
「なあ、プロトセリー、これは一回ラグア様に話を持っていった方がいいんじゃねーか?」
プロトセリーはプロトライナーを睨みつける。
黙れバカが。
というか今その名で私を呼ぶな。
リリスは考える。
プロトセリー?
確か直接会った事はないが、魔王ラグアの幹部にセリーという名の幹部はいたはずだ。
プロト…
つまり試作品…
要するにコイツらは幹部ですらない。
だが、感じる力量は自分と同格…
つまりラグアには下っ端クラスでもこんなのがゴロゴロいることを意味する。
「………わかった。しばし待て。私は本部にこの話を持っていく」
リリスの表情から完全にバレた事を悟ったプロトセリーは言ったのだった。




