第247話副産物
さて、カティアをイグロシアルまで送り届けた俺達は現在まだ、新生ドーラス王国の跡地にいた。
俺達がまだここに留まっている理由は2つ。
1つはシュドレの説得待ち。
こっちはフィリアが神託を通して先程成功したとの報告が入っている。
ちなみにシュドレの方もリンガイア王国の王になっているらしいからこれから森羅万象をかけに行く必要がある。
そしてもう一つの目的の方だが…
「ウリン、アレを出せ。俺が帰ってきた事をアルムス中に教えてやれ」
俺は説教が終わって早々に呼び出したウリンに言った。
「待ってラグア殿、アレは失敗作で…」
「今回は勝敗はどうでもいい。ただのあいさつだ。準備しろ。発動、万物の神、ダミーエルライド王国」
俺は九天大戦時に出したダミーエルライド王国を出す。
「わかったわよ。ただアレはリーゼを作った時の副産物だからあんまり期待しないでね?」
「ああ、それを出したらお前は戻れ。俺達はシュドレを迎えに行く。
ラグアのその言葉を最後にたった今作ったダミーエルライド王国に三体の存在が解き放たれる。
〜〜〜
シュドレとリンガイア王国の回収は無事に成功した。
アルムスを離れて数十年…
カティアやシュドレが自ら国を起こしていた様に、アルムスの勢力図は様変わりしているだろう。
ジジイとの戦力差は歴然とは言え、前回のミグの様なイレギュラーが乱入があるとどうなるかわからない。
当然、俺達が動く訳にいかない。
それでは本末転倒だ。
イレギュラーがいて、そいつらと交戦中にジジイが乱入して乱戦になれば、万が一があり得る。
ならば配下達の中から出すしかないが…
うん。
出せるヤツいないわ。
これは別にアイツらが使えないって訳ではない。
むしろ逆だ。
今回は不確定要素が多すぎる。
特別幹部以上のメンバーに捨て駒にできるヤツなんかいない。
ウリンに強行させて、リーゼの失敗作を出したのはその為だ。
一応雑兵としてダミーエルライド王国には、セリーのアンデットを5億程出しておいたからまあ、何も分からずに負けるという事態にはならないと思うが…
俺は玉座でダミーエルライド王国に神の千里眼を向けながら考える。
〜ダミーエルライド王国、玉座の間〜
そこには三体の存在がいる。
玉座の間にもかかわらず、その玉座は空席であった。
そして玉座の周りには三人の男女…
それぞれエリス、セリー、ライナーのクローンをウリンが成長促進をかけて作り出した存在…
体こそ成人で最低限の知識はあるが、彼女らは赤子も同然だった。
ウリンの技術ならそのままの状態でも彼女らを作り出す事はできたのだが、それでは彼女らはただの分体になってしまう。
そこでわざわざ一度赤子の状態で生み出す事にした。
結果は失敗…
クローンはオリジナルに遠く及ばない…
細胞の劣化が激しく、作り出せたのは王級が限界…
そんな彼女らは試作的な意味でそれぞれプロトエリス、プロトライナー、プロトセリーと名付けられていた。
彼女らは動く。
失敗作と呼ばれながらも、自らを生み出したものと仕えるべき、主人の命令を果たす為に…




