第228話九天大戦19
「さて、顔を上げてください」
エリローズの言葉でアナシスタは、恐る恐る土下座状態から顔をあげる。
「あなたに残された選択肢は2つです。このままラグア様の餌になるか、私の手駒になるか…」
私の…つまりラグアの配下ではなく、エリローズの手駒…
エリローズがアナシスタを問答無用でラグアの餌にしなかったのは、アナシスタを自分の手駒に引き込む為だ。
現在ラグアとエリローズは一応は味方だが、最終目的は掛け離れている。
その為ラグアの目の届かない自らの手駒が必要だった。
かと言って一から育てるには時間が足りない。
ラグアの急成長ぶりなら、近いうちに最高神のガキに届くのは目に見えている。
ならば、既存の神級クラスを引き込む。
それが一番の良策だった。
そして圧倒的格下相手に、いきなり領域展開をぶっ放したのもラグアの神の千里眼を欺く為だ。
絶対にラグアに対策をされる訳にはいかない。
アルムスのある宇宙の消滅…
エリローズはその目的を諦めてはいなかった。
「手駒に…手駒になりますっ!!」
もちろんアナシスタの答えは即答だった。
「ふふふっ、素直でいいですね。それではいろいろと偽造工作をさせてもらいますよ?分体を作れるギフトは持ってますね?まずは分体を作ってください」
アナシスタは言われた通り分体を作る。
エリローズはその分体に、気の遠くなる様な時間をかけて集めた帝級スキルを10個程渡し、無理矢理神格化させる。
「なっ!?」
本体のアナシスタは驚きのあまり固まっている。
これがオリジンゴッド…
分体を一瞬で神格化されるなど化け物としかいいようがない。
「さて、これでいいでしょう。この分体を残しておけば、ラグア様も私があなたを捕らえたと思うでしょう。事故であなたを殺してしまったと言えば疑いが残りますし、私の神格エネルギーを直接注げば私の神格エネルギーが減った事にラグア様なら気づくかも知れませんしね?まあ、死蔵している大量の帝級スキルのうちの10個渡すぐらいなら、私には造作もない事ですし、元々、神級になれる才能のあるあなたなら失敗する事はまずないでしょうしね?」
エリローズはそこで言葉を切ると、固まったアナシスタを見据えて口を開く。
「さて、ここからが本番ですよ?これからあなたを別次元…要はパラレルワールドの1つに転移させます。まあ、私が元いた宇宙、そしてこのイグロシアルがある宇宙よりも更にレベルが劣るゴミの様な宇宙ですが、さすがに私の力ではこれが限界です。さすがに私の独断でこんな事ができるのは、私より劣る最高神が治めている宇宙だけですからね」
アナシスタは口をパクパクさせて理解が追いついていない様子だ。
「まあ、細かい事は神通をくっつけておくので、向こうで説明しますよ。あまり長引かせるとラグア様に怪しまれてしまいます」
エリローズが言い終わるとアナシスタを白い霧が包み込む。
領域展開を解いた後のに残っていたのは、エリローズを除いて捕らえられたゼオンとアナシスタの分体のみであった。