第222話九天大戦13
セリーはラディアの攻撃は正面から弾き飛ばし、ナタリーの攻撃は全て躱す様にする。
詳しくはわからないが、ナタリーのあれは食らうとマズイと本能が言っている。
そしてセリーのその勘は当たっていた。
ナタリー…冥王ナタリー・アルタナスのエンペラーギフトの1つ、冥土の帝国は生命エネルギーを直接冥界へと誘う。
さすがに、帝級クラスになれば当たっても即死はしないが、冥土の帝国のその真価は魂に対して直接干渉すると言う事だ。
肉体の損傷とは違い、魂の損傷はそう簡単に回復できない。
もちろん回復しない事はないのだが、極限まですり減ってしまえば回復までに数日を要する。
そしてそれは言ってしまえば、戦闘中には回復できない事も同義である。
そんな事を思いながらセリーはラディアとぶつかる。
「マジックインパクトっ」
セリーの魔導帝のマジックインパクトにより、ラディアは衝撃でかなりの距離を吹き飛ばされる。
ナタリーはともかく、ラディア程度なら本来セリーが魔導帝の最大の技、マジックハザードを全力で撃ち込めば倒せる可能性は高かった。
たが、セリーはそうはしなかった。
主であるラグアの命令は雑魚の残滅…
そこにはナタリーやラディアと言った、ラグアの餌は含まれていない。
ラディアがぶっ飛ばされるのを横目にナタリーは言う。
「2体1でとどめも刺さないとは、随分と余裕?」
「これでもラグア様の配下の中でナンバー3だからな?」
セリーは答えた。
本当はナンバー2と言いたいところだが、悔しいが自分ではライナーには勝てない。
セリーは唇を噛みしめる。
「そんななめた事できなくしてあげる。あんたの主は正直次元が違い過ぎるけど、あんたには勝てる可能性は十分にある。発動、エンペラーギフト、冥土の帝国、デスマシンガン」
弾幕…
今までナタリーはラディアに対するフレンドリーファイアを気にして、冥土の帝国を全力展開しなかった。
だが、そのラディアはセリーにより遥か後方に吹き飛ばされている。
ならば遠慮はいらない。
ナタリーはそう判断しての事だった。
「なめるな。ラグア様より与えられし私の力はこんなものではない。発動、死霊帝、出ろ、私の下僕、猛々しい魔界の王よ」
今まで無数のアンデットを無尽蔵に作り続けた死霊帝…
ならばそれをやめ、その力をたった一体に全て注ぎこめばどうなるか…
答えはこれだ。
セリーと弾幕の間には一体のアンデットが立ち塞がる。
そしてアンデットはそのまま、デスマシンガンを全て何事も無かったかの様に受けきる。
既に生者ではないアンデットに削る魂など存在しない。
冥土の帝国はセリーのアンデットに対して、あまりにも相性が悪すぎた。
だが、セリーの行動はまだ続く。
「発動、不滅の帝、分裂」
セリーの体が2つに分かれる。
不滅の帝の分裂はHPこそ半分になるデメリットはあるが、2つ以上の動作を同時にできるスーパータスカーであるセリーにとって、この上なく有用な能力であった。
「「ダブルマジックバインド」」
2人のセリーは同時に言ったのだった。