第216話九天大戦7
「待てっお前は何ものだっ」
そう叫んだのはケビンだ。
ケビンは相手の実力を判断する能力が欠けていた。
「何ものか?ずいぶん面白い事を聞くじゃねーか。ここは俺の国で俺の城だ。俺がいるのは当たり前だろ?」
俺は言いながら思った。
そもそもこのダミーエルライド王国は青空会議したくねーから作っただけなんだよな。
ぶっちゃけ森羅万象の本物さえ無事なら、こんな所どうなってもいいし。
「ちっ、九天だかなんだか知らねーが、俺達をなめんなっ」
「やめろっ、ケビンっ!!」
サウロスの制止を無視してケビンが俺に襲いかかる。
「なめてんのはてめえだよ」
俺はケビンを数本の触手を使って八つ裂きにする。
後に残ったのは大量の血液と原型をとどめていない肉片のみだ。
「ケビンっ!!」
くそっ
ケビンが…
サウロスは心の中で毒づくが、すぐに考えを改める。
今の動きは全く見えなかった。
正直何が起きたか全くわからないうちに、ケビンは肉片に変えられていた。
あれはなんのギフトだ?
迂闊に突っ込めば、ケビンと同じ運命をたどるのは間違いない。
ここは対話だ。
対話で情報を少しでも引き出す。
サウロスは方針を変える。
「はじめましてと言うべきか?俺は勇者サウロス。先程の話の流れだと九天のラグア・エルライド殿とお見受けするが間違いないか?」
「ほう、熱くなって仲間を殺した俺に突っ込んでこないところを見ると、最初に殺したヤツ以外は少しは実力差がわかるようだな」
俺は言った。
実際にはサウロス達は、ラグアが自分より遥か格上とまではわかるが、どれほどの差があるのかは正確には分からなかった。
「まあ少しはな。それにしても素晴らしいギフトだな。神に選ばれし才能のあるものは正直羨ましいな」
とりあえずラグアのギフトを褒めて機嫌をとる。
そして上手くいけば、ケビンを殺したギフトのカラクリも分かる。
そんな思いでサウロスは発言したのだが…
「ギフト?そんなもん見せた覚えはねえぞ?鑑定持ちか?いや、ステータスに鑑定はないな。まあ、今日の俺は暇だから特別に見せてやるよ。お前のお仲間を殺した技は…今度はゆっくりやるからちゃんと見てろよ?」
俺はサウロスに分かりやすい様に千手観音モードを展開して、サウロスの周りの地面をかなりゆっくり貫く。
地面には無数の穴が空く。
化け物…
サウロスは口を半開きにしてそう思うので精一杯だった。
ゆっくり?
無数の触手が超高速で地面を貫いた。
例えこの速度でもギリギリ目で追えるがこんなもの躱せるわけがない。
「さて、お勉強は終わったか?なら楽しい殺し合いをはじめようじゃねーか」
サウロスの思考を完全に無視して、ラグアは殺気を全開にしながら言ったのだった。




