第214話九天大戦5
ロードル帝国12勇者の1人サウロスは、自らのパーティを引き連れて九天の1人、ラグア・エルライドが支配するという王国に来ていた。
彼等の今回の目的は魔王ラグア・エルライドの討伐ではない。
先走った弟子の救出である。
サウロスは思う。
魔王ラグア・エルライド…
完全にイカレタやつだ。
九天達が2つの陣営に割れて大戦をはじめた情報はロードル帝国にも届いている。
だが、それとイグロシアル全域にアンデットを放ち喧嘩を売る行為とは一致しない。
ただのバカなのか?
それともまさか、世界全てを敵に回して勝てると思っているのか?
前者ならいい。
すぐにイグロシアルの名だたる勢力に駆逐されるだけだ。
だが、問題は後者だった時だ。
そしてラグア・エルライドは突然現れて九天の椅子を掻っ攫っていった程の実力者だ。
後者の可能性は濃厚だろう。
それは考えられうる最悪の状況だ。
そこから導き出される答えは、ラグア・エルライドは九天の上位と敵対しながらもイグロシアル全域に勢力を割く余裕と、単体で九天上位と渡りあえる実力を持ち合わせていると言う事だ。
最悪だ。
弟子の救出は諦めるか?
いや、自分の弟子1人助けられないで何が勇者だ?
そんなものは勇者が聞いて呆れる。
サウロスはそう思い、王国内を進む。
〜〜〜
幸い王国内の敵は外にいるアンデットと変わらなかった。
これならただ蹂躙するだけだ。
サウロスは王国の中心にある、巨大な城に向かう。
〜〜〜
城の前に辿りつくと7体の黒い人影が見えた。
あれは悪魔と言う連中だ。
そしてその実力はこれまでのアンデット共とは、桁違いなのは一目見ればわかる。
「ケビン、クルト、ララ、気を引きしめろっ。敵はおそらく幹部クラス。これまでの雑魚とは違う」
サウロスは長年のパーティメンバー向かって叫ぶ。
サウロスのパーティメンバー達は皆、キングダムギフトを発現している精鋭達だ。
彼等は種族的にはとっくに勇者に進化しているはずだが、12勇者としてロードル帝国に数えられる事はなかった。
それはロードル帝国の12勇者のレベルが高いのもそうだが、彼等の意思の結果でもあった。
こんな死地にも自分を信じてついてきてくれる事に、サウロスは涙が出そうになる。
「「……………」」
対する悪魔達は終始無言だ。
そして無言のまま襲いかかる。
それはさながら、与えられた命令をただ遂行する人形の様であった。
こうしてサウロス達と七大罪の戦いははじまった。
〜エルライド城、回廊〜
カツンッ、カツンッ
ほぼ無人のダミーエルライド城内には俺の足音だけが響く。
だが、その時城の外で聞こえたのは、静寂を切り裂く轟音…
どうやらはじまった様だ。
俺は少しだけ歩くペースを早める。
ラグアのその十代半ばに見える整った顔には、凶悪な笑みが張り付いていた。




