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第212話九天大戦3


魔王ラグア・エルライドによるアンデットの大軍による無差別攻撃はイグロシアル全域に広がる。

それはイグロシアル各地に波紋を呼ぶ。



〜イグロシアル、魔族領〜


「クハハハッ、ラグアめ、やってくれるではないか」


言葉とは裏腹に大魔王、ゼオン・ヴェルゾアスは心底楽しそうに言った。


ゼオンは元よりナタリーの手下を差し向けたぐらいで、どうにかなる様な相手だとは思っていない。

あれはゼオンにとっては、偵察部隊でもなんでもないただの開戦を示す捨て駒だ。


結果は予想以上だった。

挑発に乗ったのかはわからないが、ラグアはイグロシアル全域に対し、アンデットによる無差別攻撃をはじめた。


これでいい。

ゼオンは笑う。

九天全てを巻き込んだ…実質的なイグロシアルの支配者を決めるこの大戦…

こうでなければ面白くない。


ゼオンはイグロシアル全域を巻き込む結果になった事に心底満足するのだった。



〜イグロシアル、ロードル帝国〜


ロードル帝国は九天達が収めている国以外では、イグロシアル最大の規模を持つ国だ。

10億近い人口…

訓練された軍隊…

そして、国家を守る総勢12名の勇者達…

例え九天だろうが、ロードル帝国に手を出せばお互い浅くはない傷を負う事になる。

そんな暗黙の了解から、過去にこの国に正面切って手を出した九天はいなかった。


だが…


「緊急通達!!九天の1人、魔王ラグア・エルライドの軍勢を確認。明らかな敵対行動あり。その数…大多数。詳細は確認不能」


帝都にはそんな報告が入ったのだ。


「すぐに軍を出せっ、そして12勇者全員に召集をかけろっ。今すぐにだっ」


ロードル帝国の皇帝は叫ぶのだった。



〜ダミーエルライド王国、玉座の間〜


「セリー、首尾はどうだ?」


俺は玉座に座りながら、目の前に跪くセリーに言った。


「はっ、ラグア様。首尾は上々です。今回のアンデットはかなり弱めにして、数を優先させておりますので、かなりの数が倒されましたが、誤差の範囲です。それに…」


セリーは城の外に視線を送る。

そこではセリーの死霊帝により、現在もアンデット達が新たに生まれ続けている。


現在は俺がセリーに無差別攻撃を指示してから、3日がたっている。

さすがにこの数を出せば、アンデット一体一体の質は前回セリーが出した5億のアンデットよりも遥かに落ちる。

たが、それでもこの世界の平均的な兵士と同等程度の質に収まっているのは、腐っても帝級スキルと言ったところか。

それともこの世界のレベルが低すぎるだけか?


俺はそんな事を考える。


その時だ。


「…ラグア様、ダミーエルライド王国内に敵数名の侵入を許しました」


セリーは俺にそう報告したのだった。


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