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第193話遊撃部隊2


マズイ…

どうする?

ラグアの為に用意しておいた札を切るか?

フレストは考えるが、それではなんの解決にもならない事をすぐに悟る。

仮にコイツを倒せたとしても、あとにはラグアが控えている。

対策をされればもはや同じ手は通用しない。

それに四天王…

仮にコイツが四天王最強だとして、もう3人いるわけだ。

今目の前にいるのは6人。

計算が合わない。

それにおそらく、この中にアンデットを使役している術者はいないのはなんとなくわかる。


フレストが考えている間に他の5人も名乗る。


「同じくラグア様配下、最高幹部で四天王のフィリア・アースだよ」


「最高幹部、四天王のフィリム・アースだ」


「特別幹部のエミリーです」


「特別幹部、リル・ナフスト」


「俺は特別幹部、アレス・ニースだ」


「なあ?戦力差は歴然だろ?できればこのまま大人しくしていてくれないか?」


ライナーが最後にそう締めくくる。


考えろ考えろ考えろ。

フレストは高速で思考を回す。

1つ言えるのは、相手は完全にこちらをなめきっている。

わざわざ攻撃できるチャンスに何もせずに全員名乗るなど、なめているとしか思えない。

だが、四天王が全員化け物と言う最悪の事態だけは避けられた様だ。

みたところ脅威になるのはライナーとか言うヤツだけだ。

あとは5人同時に戦ってもおそらく勝てる。

ならばとれる手は1つ。

このライナーとか言うヤツを味方に引き込む。

そうすればこちらにも勝機は見えてくる。

やり方は単純だ。

おだててのせればいい。


フレストは口を開く。


「ライナーだったか?それほどの力があるのに何故あんなヤツに従う?俺ならもっとお前に相応しい椅子を用意してやるぞ?」


フレストがそう言った瞬間ライナーから表情が消える。

マズイ…

言葉を間違えたか?

いや、もうあとには引けない。


「気づいてないのか?お前の力は魔王ラグアすら超えている。どうして自分より下の存在に仕える?あの様なヤツはお前の主にふさわしくない。こっちに来い。俺はお前を友として受け入れる」


実際にはラグアに匹敵はしているが、超えてはいない。

だが、どうでもいい。

ラグアだろうが、ライナーだろうがどちらかが潰れれば勝機は見えてくる。

配下ではなく友と言ったのは、自分もライナーの主には相応しいとは言えないからだ。

さすがにここまできて、実力を過信した見栄ははらない。

フレストはそう思っての発言だった。


だが、次の瞬間ライナーから凶悪としか表現できない殺気が放たれる。


「………悪い。エミリー。俺の軍のあとは任せたぞ。俺はラグア様の命令を守れそうにない」


ライナーはセリー達とは違い、あくまで平和主義だ。

多少の事には目を瞑る。

だが、目の前で主をコケにされて黙っているわけにはいかなかった。

例えそれが、主の命令だとしても…


「ライナー様…」


エミリーはその先の言葉が出てこなかった。

おそらく何を言っても止まらない。


ライナーが剣を抜きフレストに斬りかかろうとした時だ。


「やめろ。ライナー。そのゴミは私がやる。ウジ虫ごときがラグア様をコケにするなど絶対にあってはならない」


ライナーはその声を聞いて我に帰る。


「エリス様!?」


見るとエリスが転移してきていた。


フレストは思う。

なんだコイツは…

あの圧倒的な力はフィローラにすら匹敵する。

なぜこんなヤツまで…


だが、フレストの思考が麻痺している間にも状況は動く。

直後に聞こえた声でライナーとエリスは平伏する。


「だから、お前らさ?俺がやるって言っただろ?なんで俺の側近は脳筋しかいねーんだよ?」


その声の直後に転移してきた白髪の美少年は、真っ赤な瞳をギラつかせながらそう言ったのだった。

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