第187話頂上会談2
俺は玉座に座りながら心の中でほくそ笑む。
まだフィローラは何も有力な情報は言っていない。
だが、珍しく読心を使っている俺には既にある程度の情報は入っている。
俺は疲れるからやらないだけで、別に使えない訳じゃない。
まあ、たまにもいいか。
どうせすぐに本体は引っ込めるつもりだしな。
「悪いが、あらかた心は読ませてもらったわ。にしてもお前どっちつかずなヤツだな」
俺は言った。
フィローラの顔が本日二度目の驚愕に変わる。
うん、このセリフ一度は言ってみたかったわ。
エリローズにも最高神にも読心はやられっぱなしだからな。
「あの、我はまだ…」
フィローラがその先を言う前に俺は答えた。
読心は健在だ。
「別に俺につくのも最高神とか言うヤツにつくのも好きにしろ。お前が俺の分体を黙ってると約束したように俺も明確に敵対しない限りはお前には、手を出さないどいてやる」
お前には…
そのラグアの言葉は他の九天には手を出すと言外に言っていた。
そして、もう一つの意味…
お前ごときどちらにつこうが、放置してもどうでもいい。
そう言われたのと同じだ。
だが、フィローラは何も言えなかった。
コイツをどうにかできる手段は自分は持ち合わせていない。
余談だが、フィローラはゴッズギフトを2つ持っている。
1つは自らの力で得たもの。
そしてもう一つはイグロシアルの管理を任される時に最高神よりもらったもの。
フィローラは名目上は一応イグロシアルの管理を任された最高神の配下だが、絶対服従ではない。
フィローラには選択肢がある。
それはフィローラが永い時をかけて、リビングドールと言うただの魔物から進化した存在であるからこそだ。
最高神より生み出されたオリジンゴッドとは、別の意味での生まれながらの神ならそうはいかない。
彼らは生まれながらにして、神の力を使うが、成長は一切しない。
そういえば九天にも1人そんなヤツがいた。
めんどうな事にならなければいいが。
フィローラはそんな風に思う。
とにかく今は傍観が得策。
下手に手を出せばどちらかの恨みを買う。
最高神…ラグア…どちらを敵に回しても自分は終わりだ。
懐かしい。
恐怖…
自分より遥か格上の存在に対する純粋な感情…
神になってからは一度も感じた事のない久しぶりの感覚だ。
正直自分ごときには、ラグアと最高神が戦えばどちらが勝つかはわからない。
だが、確実に九天どころかイグロシアル全土を巻き込んだ大惨事になるだろう。
止める?
こんな化け物共を?
不可能だ。
ならば傍観だ。
今はそれが一番だ。
フィローラは思った。
「まあ、俺の邪魔をしなければ好きにしろ。城に部屋を用意した。国賓として迎えてやるからいつでも来い。さて、そろそろお開きとするか」
俺は分体と本体を入れ替える。
読心はここで強制終了される。
〜〜〜
フィローラは自分の城へ戻る。
「フィローラ様、いつでも出撃準備はできております。さあ、ご命令を…いまこそ魔王ラグアを…」
フィローラはそう言った配下の首をはねる。
「我の配下にバカは必要ない。失せろ」
首のなくなった死体からは噴水の様に吹き出している。
いかんいかん。
今日はラグアの件で自分は苛立っている。
ここは冷静にいこう。
しばらくは傍観。
これは変わらない。
だが、化け物が二人と言うのはマズイ…
いつ爆発するかわからない爆弾がこの世界にあるようなものだ。
どちらかには、潰れてもらわなければ困る。
しかも、自分もイグロシアルも無事で済む方法で…
フィローラ・イグロシアルは頭を抱えるのだった。




