第174話ラグアとタリス
「ラグア様、お客様をお連れしました」
エリスに連れられて、貴族の男が入ってきた。
なんかパッとしないオッさんだな。
それが俺の第一印象だ。
おっと忘れてた。
鑑定鑑定。
名前はタリス・レガッタ。
ステータスは見るまでもなくゴミ。
某、野菜の国の戦闘民族のラディッ◯なら、戦闘力5か、ゴミめ。とか言うレベルだな。
気になってたギフトとか言う能力も、エミリーの報告通り、通常スキルレベルだ。
なんか、保険に本体ひっこめた俺がバカみたいだわ。
「!?っ、ラグア様っ。そのお姿は…」
エリスが言った。
そう言えばエリスに説明してなかったわ。
アイツには俺がとんでもなく、弱体化した様に見えるはずだ。
俺はエリスの神託を使って訳を説明しようとするが…
使えない…
やっぱ神である、本体じゃないとこれもダメか。
しゃーない。
口で言おう。
俺は言う。
「気にするな。万が一の時の保険だ」
エリスはその言葉だけで察した様で、俺の後ろに控える。
「待たせて悪かったな。俺はラグア・エルライド。元いた世界では魔王なんて呼ばれてた。タリスだったか?まあ、適当にくつろげよ」
化け物…
タリスは思った。
タリスは先程までの、浅はかな考えをしていた自分をぶん殴りたくなった。
あれを見た後なら、エリスとか言う側近など可愛くみえる。
我が国の王?
キングダムギフト?
そんなもの、目の前の化け物にとっては、ゴミ以下だ。
会った事も見た事もないが、あれは確実に九天クラスだ。
タリスはそんな事を考える。
九天はイグロシアルにおける、絶対強者上位9名に与えられる称号である。
アルムスの13魔王との1番の違いは、九天はあくまでも称号だと言う事だ。
九天同士が個人的に対談する事は、もちろんあるだろう。
だが、それはあくまで個人的な話だ。
アルムスの13魔王は、決して一枚岩ではないとは言え、曲がりなりにも魔王ミュラ・ゾフィスが一応はまとめていた。
だが、九天にはそれが一切ない。
完全な無法地帯。
九天同士は、互いに敵対する関係がほとんどだ。
そして、そんな九天だからこそ、神、魔王、勇者、竜王、冥王など、様々な存在がそこに名を連ねている。
13魔王とは違い、九天の席が空く事は基本的にはない。
なぜなら、九天を殺した者こそ次の九天だからだ。
ちなみにだが、九天が九天に殺された時は、下からの繰り上がりになる。
どちらにしろ、九天はイグロシアルがある限りなくなる事はない。
「お初にお目にかかります。魔王ラグア・エルライド様。私はモルエデス神国、子爵タリス・レガッタと申します。この度は私の申し出で、この様な席を設けていただきありがとうございます」
少しでも、この化け物の機嫌を損ねる訳にはいかない。
タリスは緊張しながら言ったのだった。




