第170話情報収集2
「エミリーです。失礼致します」
エミリーの声がしてエミリーが部屋に入ってくる。
あ?
なんだ?
なんかエミリー顔色めちゃくちゃ悪いんだけど。
体調悪いのかな?
なんかこの世の終わりみたいな顔してるし…
エミリーは俺の前まで来ると跪く。
「ラグア様、エミリー参りました」
緊張のためかエミリーの声は震えていた。
「よお、エミリーよく来たな。まあ、楽にしろよ」
俺が適当に労うとエミリーは顔を上げる。
真っ青を通り越して蒼白である。
ラグアは基本的に神の力の1つである、相手の心を読む読心を使わない。
決してできないわけではないが、ラグアは使うと疲れると言ってよほど必要に迫られない限り、使う事はない。
ましてや、第二次神魔大戦の後処理で疲れている状態で、特別幹部という自らの側近相手に、読心を使うなどと言う選択肢などない。
まあ、だいぶ具合悪いみたいだけど、別に戦闘任務でもないしなんとかなるだろう。
どうしてもダメならエミリーに報告と管理だけさせて、任務自体はエミリーが自分の部下に丸投げすればいい。
俺は言う。
「今日お前を呼んだのは…」
エミリーは思う。
その先は聞きたくない。
降格か?
処刑か?
どちらも嫌だが、まだ降格の方がマシだ。
だが、最近のラグア様は事後処理ですこぶる機嫌が悪い…。
嫌だ嫌だ嫌だ…
だが、その後に続いたラグアの言葉はエミリーの予想していないものだった。
「お前に任せたい任務があるからだ」
〜〜〜
気づくとエミリーは自室に戻っていた。
ラグア様との会話の内容自体は覚えている。
任務内容はこの世界の情報収集。
連れていく部下の人選はワタシに一任。
そして、現在エミリーの手の中には小石程の機械が握られていた。
言語解析装置…
ラグア様が同盟国である、ドワーフ国家、ドーラス王国の5王の1人ウリン・ドーラスに作らせたもの…
アルムスからこの世界に移って、まだ3日しか経っていないというのに出来は完璧である。
ワタシはウリン・ドーラスには会った事はないが、ラグア様やエリス様とは違った方向で彼女もまた天才なのだろう。
エミリーは息を吐く。
なんとか首の皮一枚繋がった。
これはたぶんラグア様の温情だ。
本来なら、問答無用で降格もしくは処刑が、当然のワタシに対して、最後のチャンスを与えてくれたのだ。
絶対に失敗する訳にはいかない。
エミリーは思う。
実際にはラグアはそんな事全く考えていなく、エミリーを選んだのも、王級クラスの配下は今回の任務に適さないと思っただけなのだが、エミリーにはわからない。
〜エルライド王国、玉座の間〜
俺は1人考える。
いったいなんだったんだ?
エミリーは途中まで顔面蒼白だったが、任務の内容を聞いた途端、急にやる気を出した。
まあ、やる気出す分には困らんしいーか。
〜〜〜
そして、1週間後。
エミリーは再び俺の元に任務の報告にやってくるのだった。




