第150話ラグアとシュドレ2
シュドレ・イロードは、エルライド城の玉座の間の待合室にいた。
シュドレは昨日の事を、思い出す。
昨日ははじめて父の仇、魔王ラグア・エルライドに会った。
命をなんとも思ってない様な目…
全身から漏れ出る濃厚な殺気…
隠すつもりもないだろう、狂気のごとき残虐性…
ゼギウスさんの鑑定すら嘲笑う圧倒的な神の力…
全てが異常だった。
サイコパス…
それがシュドレのラグアに対する第一印象だった。
普通サイコパスは普段、その性質を隠す様に振る舞う。
だが、サイコパスが絶大な力を持ってしまったらどうだろう?
答えは昨日見た魔王ラグア・エルライドだ。
自重する必要のなくなったサイコパスはその本来の性質を隠そうとしない。
というか隠す必要がない。
ラグアの側近になる事には成功した。
だが、全く喜べない。
自分はあんな化け物を相手にしていたのかと、心が折れそうになる。
その度に父の顔を思い出して、律しているが…
今日はラグアから呼び出されている。
今回呼び出されたのは、シュドレだけだ。
昨日、シュドレとエミリーが特別幹部に抜擢されたが、今日呼び出されたのはシュドレだけだ。
悪い事ではなければいいが…
シュドレは思った。
〜エルライド城玉座の間〜
俺は玉座に深く座りながら目の前で跪くシュドレを見下ろす。
今回の侵攻はゴルドを失ったのは痛いが、コイツを見つけられたのはかなりのプラスだ。
近いうちに必ず来る第二次神魔大戦…
神同士の殺し合い…
その戦いに参加できるものは少ない。
正確にはしても、犬死だろうが…
現在こちらの陣営として戦力として考えられるのは、俺、エリローズ、テオレーム、セルナースとカティアの2人ぐらいだ。
そこにシュドレが加わるのは、かなりの余裕ができる。
ちなみに俺の配下達や他の面々は参加させるつもりはない。
言っちゃ悪いが、はっきり言って戦力外だ。
それでも帝級クラスのエリスとセリー、ライナー、フィリア、フィリム、ノーマンの王級クラスでは、かなりの差があるが、下級神クラス相手に手も足も出ない事では同じだ。
今回エリスが逃げ切れたのは、運が良かったとしか言えない。
そういえば、今回の報告でセリーとカティアがドワーフ国家、ドーラス王国との同盟に成功、フィリアとフィリムがナフスト王国の勇者の勧誘に成功との報告もきているが、まあ、そっちはあとでいいか。
俺はそんな事を考える。
ラグアの弱点は神の力の1つである、読心を常時発動させていない事だ。
慣れていないラグアは相手の心を読む、読心はできるにはできるが、疲れるため面倒で基本的にはやらない。
それに今回ははじめから敵ではなく、味方としてシュドレと会っている。
更にラグアは、よくも悪くも殺し過ぎた。
その数は膨大な数にのぼるため、ラグアは殺した人間をいちいち覚えていない。
もし、ラグアが読心を使っていたら、もしくはラグアがシュドレの父親を覚えていたら、また違う結果になっていただろう。
「そう固くなるな。面を上げよ。改めて俺は魔王、ラグア・エルライドだ。勇者、シュドレ・イロード。いや、転生者シュドレ。今日はお互いの為に有意義な話をしたいと思っている」
俺はそうシュドレに向かって尊大に言うのだった。




