第149話ラグアとシュドレ
俺はテレーズ帝国に転移した。
だが、全く状況が飲み込めない。
なんだこれ?
ライナー率いる本隊は自陣に居座って全く動いていないし、テレーズ帝国は壊滅状態。
立ってるのはガキが1人…。
なんだこの状況?
全くわからん。
ラグアが疑問符を浮かべている間に、突如現れた正体不明の相手にシュドレは鑑定を使う。
だが…
対象に対する鑑定に失敗。
そんな一文が頭に流れた。
ん?
今鑑定されたか?
見える訳ねーじゃん。
俺神だよ?
てか今気づいたけど、あの制服は確かライナーの部下だよな?
って事はコイツ俺の配下でもあるって事か?
こんなヤツいたか?
単体で魔王倒せる様な配下を覚えてない訳がない。
俺はそう思い鑑定を使うと…
いや見えたけどさ…
強くね?
それに固有スキル、神託と称号の転生者…
たぶん魔王倒した影響だけど、帝級スキル4つって俺の配下じゃ最強だよ?
エリスより上でだし…
それに神託がある時点で神の力が使えるし。
つーか、こんなヤツがなんで下っ端なの?
ライナーバカなの?
いや、アイツはバカだったか。
そうこうしているうちに、俺が来たのに気づいたのか、ライナーがやってきた。
傍らには副官の女を連れている。
名前は…
忘れた。
確かエリスに拉致させた、100人のうちの1人だったと思うけど、もう10年以上まともに会ってないし、そんな連中はいちいち覚えていない。
ライナーは跪く。
「ラグア様、わざわざこんなところまで来ていただきありがとうございます。此度の戦いはこちらの完全勝利に終わりました」
いや、確かに完全勝利に終わったけどさ?
お前何もしてなくね?
俺はここまで、出そうになった言葉を飲み込む。
別に失敗したわけじゃないしいーか。
俺は言う
「ライナー、ご苦労。話は変わるが1つ聞きたい。コイツは誰だ?」
「はっ、こちらは第二次侵攻前の一週間の間に配下になったシュドレ・イロードと言うものです」
ライナーは答えた。
第二次侵攻前って俺何やってただろうか?
……………。
うん。
完全に引きこもって遊んでたわ。
つまり俺がコイツの存在を知らないのは、完全に自業自得か。
まあ、そんな事は口が裂けても言わないが。
だってダサくね?
俺の威厳に関わる。
ここは知ってた風を装って何気なく、側近に引き抜こう。
俺は言う。
「ライナー。よく優秀な配下をよく見つけてきてくれた。まずは褒めておこう。今日を持ってそのシュドレ・イロードを特別幹部に抜擢する」
「はっ、もったいなきお言葉です。ですが、この者を連れてきたのは俺ではなく…」
ライナーは傍らにいる女に視線を送る。
女は跪く。
「お久しぶりです。ラグア様、ワタシはライナー様の元で副官を務めさせていただいてます」
女は言った。
「エミリー。よくやった。今回の功績を称えてお前も特別幹部に抜擢する」
俺は言った。
なんで俺が知らない女の名前がわかったかだって?
そんなもん跪いてる間に、鑑定使ったに決まってるだろ。
できる上司は配下の名前をちゃんと覚えているんだ。
うん。
こうして、魔王ラグア・エルライドと勇者シュドレ・イロードの出会いは静かに幕を降ろしたのだった。




