第148話エリス奮闘記4
予想以上だ。
これなら…
いや、油断はよくない。
油断するのは無事に逃げ切ってからだ。
エリスはそう思いながら、ジオへと向かって進む。
「だからー、ウチの事おいていかないでよー?」
シーラが攻撃をしかけてくるが、それは予測していた。
エリスは空間に亀裂を入れ、七大天使を解放する。
絶好のタイミング…
シーラは完全にこちらをナメている。
殺せればラッキー。
仕留めきれなくても深手を負わせれば、しばらくジオの援護には入れない。
エリスはそう思いながら、最大の技を繰り出す。
「消滅破拳っ」
エリスは思う。
帝級クラスになった祝いで、エリローズ様より貰ったこの技は本来全くと言っていい程使いこなせていない。
相手も消滅するが、自分も消滅する完全な自爆技だ。
試し打ちした時に、エリローズ様が助けてくれなければ今頃自分はこの世にいないだろう。
だが、ラグア様の七大天使の1体、メタトロンの能力ダメージ無効があれば全て解決する。
エリスの最大の技は完全にナメきった、シーラに直撃した。
「グエぉぉぉっ」
女が絶対に出しちゃいけない声を出しながらシーラは真っ二つになる。
真っ二つになった断面は、もの凄い勢いで消滅をはじめている。
やったか?
いや先にジオだ。
エリスそのままジオに向かう。
「消滅破拳っ」
ジオのサポート悪魔3体が消滅する。
これで終わりだ。
エリスがもう1発、消滅破拳をジオに叩きこもうとした時だ。
「…発動、水神の帝…」
シーラが静かにだが、響き渡る様な声で言った。
その瞬間、猛烈な衝撃波が生まれ、ゴルドを近くにいた、ジオの悪魔4体ごと塵に変えた。
更に余波でエリスと天使もぶっ飛ぶ。
それだけで七大天使は全滅だ。
これはマズイ…
エリスはとっさに自分の背後の空間に亀裂を入れる。
早く、早く開けっ。
普段は一瞬で開いているイメージだが、神クラスの戦いになると一瞬が一瞬ではない。
ゴルドが死んだのは、確実に自分の判断の甘さだ。
帰ったらいかなる罰でも受けよう。
だが、今ここで自分が死ねば誰がラグア様にこの事態の報告をするのだ。
エリスは思った。
「ナメてて死にかけるなんていつ以来だろう?でもさすがに、ミグにあれだけ啖呵切ってジオを死なせたら、ウチ帰れないよ?」
シーラは言った。
体はもう完全に再生している。
開いた。
エリスは逃げようとするが…
「死ね…。水神の咆哮」
神の一撃がエリスに迫る。
エリスは自分の腹に滅拳を全力で打ち込んだ。
大ダメージを受けて意識が遠くなるが、空間の亀裂に自分の体が、吸い込まれるのがわかった。
そこでエリスの意識は途切れる。
〜〜〜
「逃したかー。避けられないから自分の体に帝級スキルぶち込んでかわすとか考えたねー。まあ、次はないけどね?帰るよジオ」
エリスのいなくなったライカン帝国郊外にシーラの声がこだました。
次回はラグアとシュドレの話に戻ります。
基本、ラグア視点です。




