第144話ラグアの片腕
時は少し遡る。
ラグアと勇魔王、アレス・ニースはエルライド城、玉座の間で向かいあっていた。
だが、アレスの膝はラグアの殺気と神のオーラにあてられて完全に笑っていた。
俺は言う。
「俺の城へよくきたな。まあ、適当にくつろげよ?今日は楽しい話でもしようじゃねーか?」
アレスは思う。
よくきた?
え?拉致されてきたの間違いじゃないの?
くつろぐ?
こんな化け物の前で?
できるわけがない。
いや、プラスに考えよう。
こんな化け物と楽しい話ができるとは思えないが、相手は呼び出し方は別として、今のところ友好的な対話を望んでいる。
ここは、大人の対応の見せ所だ。
俺はいつまでも中学生じゃない。
アレスが口を開いたその時だ。
「ラグア様、失礼します」
「おう、エリス。早かったな。もうライカン帝国は潰したのか?」
入ってきたのは、エリスだった。
にしても、早かった割にはそこら中ボロボロだし、いっしょに行ったゴルドもいない。
なんか嫌な予感がした。
「ラグア様、申し訳ございません。今回の責任はどうか私の命で償わせて下さい」
土下座してるエリスは今にも自殺しそうな勢いだ。
俺は言う。
「は?何があったんだよ?」
エリスは土下座したままの体勢で言う。
「獣人国家、ライカン帝国近郊にて、ジオ・デストロイア及びシーラ・ベルネイアと交戦、ゴルド・シーマは死亡しました」
いやいやいや、むしろその面子でよく生きてたな?
むしろ褒めるべきかって気持ちすら湧いてくるレベルだぞ?
「申し訳ございません。ラグア様の大切な配下を死なせたばかりか、おめおめと逃げ帰ってきてしまい、しかし、この事態をラグア様に報告するのが、私の最後の使命と思い帰ってまいりました。覚悟はできています。できれば、ラグア様の手で介錯をお願いします」
うん、褒めよう。
これ叱っちゃいけないヤツだわ。
俺は言う。
「エリス、よく生きて戻った。むしろソイツらと戦って生きて戻れたのは誇るべきだ。それにエリス、お前も俺の大切な配下だ。それどころか大事な片腕だ。お前をこんなつまらない事で失う訳にはいかない。今日はもう休め。明日からまた期待してるぞ?」
「もっもったいないお言葉を…うぅぅ」
エリスは泣き出してしまった。
やり過ぎたか?
いや、でも自殺されても困るしな。
てか、ゴルド死んじまったか…
………………。
うん。
ダメだ。
俺は先に帰ってきていたセリーを呼ぶ。
セリーとカティア達は無事に交渉に成功している。
「アレス、悪いな。今日の面会は中止だ。セリーっ、アレスは最上級の客人として扱えっ」
「はっ」
つまり、カティアやノーマンと同等の扱いにしろと言う事だ。
〜〜〜
誰もいなくなった玉座の間から俺は亜空間に転移する。
「クソがぁぁぁ」
俺は怒りに任せてビックバンを亜空間に空撃ちする。
やられた。
これは確実にミグの差し金だろう。
完全に見誤った…
あのガキ、いや実年齢ガキじゃねえがやはり、アイツは生かしておく訳にはいかない。
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
いや、落ち着け。
今は冷静に…
これ以上の被害が出ていたらマズイ…
念のため万物の神で他の配下達を見渡す…
フィリアは…苦戦はしているが、フィリムに借した七大罪があれば勝てるだろう。
ライナーは………。
は?魔王?
アイツ勇者を殺しに行かせたんじゃなかったか?
魔王順位いきなり5位って…
神級除けば最強じゃねえかよ…
あ?魔王が今度は化け物に殺された…
訳わかんねえよ。
クソがっ次から次へと…
もう行くしかねえ。
こうして、俺はテレーズ帝国に向けて転移をするのだった。
次回は久々に閑話です。




