第143話テレーズ帝国攻略戦10
「フハハハハハハっ」
笑みを浮かべていたジルドは突然笑い出した。
これが笑わずにいられるか。
期待以上の成果だ。
頭の中では、レベルアップの音が鳴り響いているが、そんな事はどうでもいい。
自分のステータスが目まぐるしく変化するのが、ジルドはわかった。
条件達成…
固有スキル、魔王を取得。
魔王5/11
王級スキル、犠牲の王が帝級スキル、犠牲の帝に進化。
王級スキル、外道の王が帝級スキル、不滅の帝に進化。
帝級スキル、天狐の帝を常時解放。
帝級スキル、光速の帝を取得。
称号、魔王を取得。
テレーズ帝国を、皆殺しにすれば帝級クラスにまで、至れるのはわかっていた。
だが、そこから先は賭けだった。
結果は、今一番欲しいスキルが手に入った。
帝級スキル、光速の帝…
俊敏においては神にすら並ぶこのスキル…
これで逃亡の成功率は大きく上がった。
称号と固有スキルの魔王の条件は不明だが、たぶん帝級に至る過程の人間の大量虐殺がその要因だろうか?
ジルドはそんな事を考えながら光速の帝を発動させる。
そしてジルドはシュドレの問いに答える。
「今まで守ってあげたんですから、少しは私の役に立ってもいいはずです。それから、私をここまで追い詰めるとは、さすがです。次に会う時は負けませんよ?」
ジルドはそのまま全力で逃げる。
光速の帝で俊敏が∞表示になっている。
ジルドの速さは凄まじい。
さすがのシュドレも追いつく事はできない。
俊敏が同じという事は、どれだけ追っても差が縮まる事はない。
なら、シュドレはジルドを逃してしまうのか?
答えは否だ。
シュドレはその場で目を閉じる。
見える…
遥か遠くを脇目もふらずに超高速で逃げるジルドの姿が…
神級スキル、天地の神の真価はその索敵能力にある。
アルムスの全てが神級スキル、天地の神の領域…
つまり、アルムスのどこに逃げようと対象をピンポイントで殺す事ができる。
「発動、神級スキル、天地の神、天地逆転」
よし、当たった。
シュドレは無事に技が成功した事を確認した。
〜テレーズ帝国から1万キロ程離れた地点〜
ジルドは思う。
賭けには勝ったようだ。
追ってこないという事は、つまり諦めたという事だ。
「フハっフハハハハハっ」
自然と笑いが込み上げてくる。
だが…
「!?っ」
突如視界が真っ赤に変わる…
何が起きたかはわからない。
だが、熱い…
不滅の帝の再生力が全く追いつかない程の速度で、体が破壊されていく…
なぜ?
ジルドは考える間もなく燃やし尽くされる。
〜テレーズ帝国近郊〜
シュドレは大量の経験値を得たのと、帝級スキル、天狐の帝、不滅の帝、犠牲の帝、光速の帝が譲渡されたのがわかった。
ゼギウスとの融合はもう解除している。
その時よりは、遥かに劣るが大幅に力が増大したのをシュドレは感じた。
シュドレが先程使った技、天地逆転は名前の通り、対象の天地をひっくり返す。
ジルドが送られたのは、アルムスの中心核…
万に一つも助かりはしない。
シュドレは思う。
最低なヤツだったけど強敵だった。
ゼギウスさんの力が無ければ確実に負けていた。
だが、これでようやくラグアの側近になれるぐらいの力は得ただろう。
さすがに、いくら最高幹部でも帝級スキル持ちがゴロゴロいるとは考えにくい…。
だが、今回は明らかにやり過ぎた。
恐らくこれはラグアにも自分の存在がバレただろう。
シュドレがそんな事を考えていると…
「あぁぁ?クソがぁぁぁ、なんなんだよ今日は!!そこら中で問題ばっか起きやがってよぉ?」
突如、シュドレの目の前に転移してきた中性的な美少年は、真っ白な髪を吹き上がるオーラでなびかせて、殺気のこもった真っ赤な瞳をシュドレに向けながら、八つ当たり気味に言ったのだった。
次回は久しぶりに主人公の話です。




