第139話テレーズ帝国攻略戦6
制約の王はラグアが前にミグとの戦いで、万物の神によって発動させた制約の劣化版だ。
対象、もしくは空間を選び効果を発動させる。
空間を選んだ場合はその影響は、スキルを使った本人にも及ぶので、より強い効果を期待できる。
自分の部下達が無事に、距離をとった事を確認してシュドレは安堵する。
さすがは鍛えられたエルライド王国の軍だ。
これがリンガイア王国の軍勢なら、移動にも倍の時間がかかるだろう。
まあ、これは兵の質ばかりでなく、シャリーの魔法のサポートによるものも多々あるのだが…
とにかくこれで自軍は引かせた。
シュドレが制約をかけるのは空間…
範囲は自分から半径1キロ…
そして、その範囲内にいる全ての生物にその空間の外に出る事を禁じるというもの。
無論、その影響は自分も受ける。
だが、自分はここでジルドを討つつもりだ。
元から撤退する気はないので関係ない。
制約の解除条件は、スキルを仕掛けた本人の死亡か、範囲内にいる全ての敵対生物の排除。
そう。
シュドレな自分自身でスキルを解除するという、保険を捨てた。
そして、それを行った事に対するリスクはスキルの効果を跳ね上げる…
さすがに帝級クラスなら破れるだろうが、いくら帝級クラスでもすぐには破れないレベルの制約だ。
それだけの時間があれば十分だ。
ジルドは言う。
「なるほど。退路を断ちましたか。これを破るには私でも少々骨が折れそうですね。いいでしょう。ならばこちらも…発動、王級スキル、嘆きの王」
ジルドはスキルを発動させた。
ジルドの体から不気味な怨念が漂う。
「夢半ばで散っていった我が同胞達…。死しても尚、私の力となってくれる。これも部下に信頼されている賜物ですね」
シュドレは思う。
何をふざけた事を…
自分の私利私欲の為に味方を殺しておいて何が信頼だ。
王級スキル、嘆きの王…
散っていった味方の力を一時的に借りる事ができる。
その怨念エネルギーを使い切らない限り、時間をかけて再び利用する事ができる。
複数を同時に使役、もしくは使い捨てにする事も可能。
ジルドのスキルははっきり言って強い。
味方がいる限り無敵の外道の王…
そして、それによって死んでいった味方を有効利用する、嘆きの王…
更に、味方が死ねば死ぬ程強くなる犠牲の王…
完全に他者の力に依存しているが、はっきり言って強い。
高レベルの洗脳は自分の為に死んでくれる狂信的な味方を量産するのに必要なのだろう。
だが、そんなのは勇者である以前に人として終わっている。
あのラグアでさえ、いや、ラグア本人にはまだ会っていないが、ラグアの配下を見る限り、敵には容赦がないが、味方は大切に扱っている。
目の前のジルドはそれ以下だ。
コイツは殺さないとダメだ。
こんな味方を消耗品としか思っていない様なヤツ…
人を人とも思わない様なヤツ…
こんなヤツ絶対に生きていちゃいけない。
シュドレは殺意のこもった目でジルドを睨みつけるのだった。




