第138話テレーズ帝国攻略戦5
「それは、残念ですね。ところであなたはどちら様で?見たところ少しはやるようですが、私にはあなたの力は通用しないようですよ?大人しくこちら側に来たらどうです?」
ジルドは言った。
シュドレは考える。
水爆で倒しきれないとなるとおそらく、四元の王は通用しない。
あれを受けて無傷ってのは、犠牲の王を解放してない王級クラスではありえない。
おそらく…
王級スキル、外道の王…
半径100メートル以内に知的生物がいる場合、その生物に自分のダメージを肩がわりさせる事ができる。
ダメージを与えた生物と、自らの力を上回る生物は対象外である。
このスキルはマズイ…
はっきり言って多対戦において、このスキルがあれば無敵だ。
例えば5人がかりで挑んだとしよう。
その5人は本来なら5人で挑めば勝てる実利者だ。
だが、このスキルがあれば実質1人で倒す以外に方法はない。
5人で挑んだ側はフレンドリーファイヤーを繰り返し、1人の側は最後の1人を潰せばそれで終わりだ。
シュドレは言う。
「シャリー、軍を後退させてくれ。最低でも、1キロは距離をとってくれ」
「でも…」
「いいから早くっ!!」
シャリーは軍に後退命令を出す。
シュドレは思う。
1キロ距離をとれば戦闘中に多少動き回ってもジルドの効果範囲内に入る可能性は薄いだろう。
「これは驚きました。あなた私のステータスが見えているのですか?ますます我が国に欲しいですね。そういえばまだ、名乗っていなかったですね。私はテレーズ帝国、勇者、ジルド・スタークと申します」
ジルドは言いながら考える。
鑑定持ちか?
となると、嘆きの王と外道の王の詳細は見られただろう。
現在の実力は相手の方が上…
それは、漂う気配でわかる。
だが、犠牲の王を発動すれば、限定的とは言え、帝級クラスに至れる。
今現在の自分のレベルの低い鑑定では、相手の名前ぐらいしかわからない。
犠牲の王を発動すれば、こちらの実力が相手を遥かに上回るので鑑定できるが、使えばそもそも瞬殺できるので、使う意味がない。
と言うかあの名前は確か…
シュドレは答える。
「俺はシュドレ・イロードだ。お互い無駄な犠牲は望まないだろう。決闘を申し込む」
「シュドレさんですか。聞き覚えのある名前ですね。リンガイア王国の勇者様が、大軍を引き連れて攻めてくるとは…。そして私のステータスが見えているにもかかわらずそんな提案を受けるとでも思っているのですか?」
「今はただのシュドレ・イロードだ。リンガイア王国はこの件に一切関係ない。決闘は受けてくれないか。無駄な犠牲は、避けたかったのだが仕方ない。発動、王級スキル、制約の王」
シュドレはエミリーに話したもう一つのスキルを発動させるのだった。




