第134話テレーズ帝国攻略戦
「ライナー様。全軍、進軍準備完了いたしました」
副官のエミリーが言った。
ライナー達は現在、テレーズ帝国の正面に軍を展開している。
その数、約250万…
ライナー達は大軍をフィリアの長距離転移で展開させていた。
ちなみにフィリアとはそこで別れた。
フィリア達は今頃ナフスト王国を侵略しているだろう。
「エミリーご苦労。というか本当に任せていいのか?」
ライナーは言った。
今回ライナーが軍を動かしたのは、エミリーの進言があった為だ。
基本的に考える事が苦手なライナーは、戦略等は副官のエミリーに丸投げしている。
ライナーは四天王の中では一番温厚な性格だ。
だが、知略と言うたぐいの事は一切できない。
できない事ははじめからしなければいい。
そんないい加減な統率で、ライナーの軍が軍としての形を保っているのは、エミリーの努力もあるが、ライナー自身がラグアの誇る四天王の中で最強であるからだ。
実力主義のラグアの配下の中でも、ライナーの軍は特にその色が強い。
「ご安心下さい。ライナー様。ライナー様はそこに座っていただいているだけで大丈夫です。ライナー様の出番はありません」
エミリーはライナーに自信満々に答えると自らの配下達の方に向き直り言う。
「さあ皆さん。出陣の準備はいいですか?と言っても出番があるかは微妙なところですが。シュドレっ」
客人だった頃と違い、シュドレはエミリーの部下である。
敬称はつけない。
「はっ」
シュドレがエミリーの前に跪いた。
「シュドレ隊、バルダ隊、シャリー隊には先鋒を命じます。派手に暴れてきてください」
エミリーはニヤリと笑みを浮かべながらそう言った。
シュドレは答える。
「はっ。初任務必ずや成功してみせます」
「あなたにとっては造作もない事でしょうに。まあ、ワタシ達はあなたが討ちもらして逃げた兵士を狩るとしますか。おそらくそれすらないと思いますが」
エミリーはシュドレの力を認めている。
自分では絶対にたどり着けない王級クラスに至った存在…
唯一手こずる可能性があるのは、テレーズ帝国の勇者だが、それもあまり心配していない。
3日前の戦略会議でシュドレとエミリーは密談していた。
その時に聞いたシュドレの王級スキルは2つ。
その能力も聞いている。
その数とスキルの性能は四天王でも古参のライナー様やセリー様に匹敵する。
エミリーはシュドレを送り出す。
ちなみにシュドレはエミリーに嘘をついている。
実際にはシュドレの王級スキルは3つだ。
ラグアの配下に手の内を全て明かす程、シュドレはバカではなかった。
「可哀想だけど、この国には消えてもらおう。全てはラグアと言う巨悪を討つ為だ」
シュドレはバルダとシャリーにしか聞こえない小さな声でそう言ったのだった。