第129話フィリアとフィリム3
フィリアは邪悪な笑みを浮かべながらそう言った。
エリスやセリー、ライナーと言ったメンバーは元々ただの人間からラグアの配下になった。
その人間性はラグアの影響を多分に受けているし、忠誠心ははっきり言って狂信的だが、ラグア本人程の残忍さはない。
だが、フィリアとフィリムは違う。
彼女たちはラグアの配下になる前から魔王の一角。
ノーマンの様な例外を除いて、魔王の本質は残忍、残虐につきる。
彼女たちは四天王の中で、個々の能力はセリーやライナーには劣るが、その本質は凶悪そのものだった。
その点で言うなら、転生者の中では例外中の例外のラグアも魔王らしい魔王と言えるだろう。
フィリアの言葉を聞いたリルは相手の認識を改める。
やはり魔王…。
自分達人間とは根本的に考え方の違う存在…。
だが、状況が変われば答えも変わるだろう。
今、相手は自分が圧倒的に有利な状況と思いこんでいる。
その認識を改めさせれば必ず突破口は見えてくるはず。
かなりの犠牲が出るのでやりたくはなかったが仕方がない。
こうなれば総力戦だ。
リルは叫ぶ。
「全軍、総攻撃開始。魔導部隊は上空の妖精1人に絞って攻撃。地上に落とせ。地上部隊は落ちたところを確実に仕留めろ。こっちの敵の幹部2人は私がやる。全軍進めっ」
今までやられ放題だったナフスト王国から、規律のとれた部隊が出てくる。
その練度はエルライド王国の部隊程ではないが、なかなかのものだ。
余談だが、フィリアもフィリムも自分の部隊は副官に丸投げしている。
そもそも元々魔王だった彼女たちは、有象無象がいくら集まったところで1人の一騎当千級の実力者の経験値にしかならないと思っている。
フィリアとフィリム、2人合わせてラグアから総500万の配下を預かっているが、その必要性は正直彼女たちにはわからかった。
ライナーが今回そんなものを持ち出したのは、いつものバカな行動としか思っていない。
まあ、無駄な犠牲を出してラグア様に怒られるのはライナー1人でいいので、今回フィリア達はテレーズ帝国侵攻には加わらなかった。
だからこそフィリアは、目の前で起きている事態が信じられなかった。
現在、目の前ではデモンピクシーとナフスト王国の魔導部隊が戦闘を繰り広げている。
そう、繰り広げているのだ。
デモンピクシーはフィリアが使える妖精の中では、はっきり言って雑魚だ。
だが、腐っても王級スキル。
ただの人間ごときでは、勝負にすらなるはずはなかった。
それがどうだ?
状況は互角…
だが、それはデモンピクシーが上空で戦闘を行っているからだろう。
これに地上部隊まで加われば確実にデモンピクシーはやられるだろう。
だが、フィリアに湧いてきたのは全く関係のない感情だった。
「………ラグア様みたいな綺麗な髪に私達には真似できない統率能力…。でもよかったよ。お前が敵で。味方だったら確実に嫉妬しちゃうよ」
フィリアは明確な殺意をもった瞳でリルを見てそう言うのだった。




