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第128話フィリアとフィリム2


勇者が出てこない。

いないのかな?

いや、世界の大半が戦争状態のこの異常事態で自国を留守にするなどありえない。

勇者は必ずいる。

それはつまり…


フィリアは妖精王を発動させる。

呼び出す妖精は索敵系。

相手は確実に王級クラス…

フィリアの妖精王は万能スキルだが、1つ1つの能力は特化型のスキルよりはかなり劣る。

ある程度距離があるとまともな索敵などできない。

だが、ヤツは必ず近くにいる。


見つけた。


フィリアは叫ぶ。


「フィリムっ、後ろっ」


ガキンっ


間一髪でフィリムの防御結界が間に合う。

やはり狙いは奇襲…。

フィリアは敵の認識を上方修正する。

ナメてかかったらやられる。


「むっ、奇襲を防がれたか。思ったより賢いようだな。私はリル・ナフスト。この国の第三王女にして、この国の勇者でもある。お前達は何者だ?名乗れ」


女勇者、リル・ナフストは言った。


見た目は美人の部類に入るのだろうが、それはどうでもいい。

特徴的なのはその真っ白な髪。

なんかラグア様みたいだな。

フィリアはそんな事を思いながら答える。


「名乗れって言われて名乗るのもなー。まあいいや。私はフィリア・アース。妖精魔王、魔王ラグア様の四天王、エルライド王国最高幹部、とか呼ばれてるよ」


「同じくフィリム・アース」


フィリムの方は完結に答えた。


フィリアは続けて言う。


「それで?奇襲は失敗したみたいだけど要件は何かな?決闘なら受けないよ。魔王の中じゃ、かなり弱い部類に分類される私達は、2人でこそその真価が発揮される。1人で戦うメリットも何もないしね」


「こちらは2対1でいい。そのかわりそこで無差別攻撃をしている配下を下げてくれないか?それがこちらの提案だ」


「2対1かー。ずいぶんナメられてるみたいだね。ラグア様の名前を聞いて無条件降伏しないのはすごいと思うけどね」


リルは考える。

無条件降伏?

そんな事をしたらこの国の人々がどんな目にあわされるかわかったものじゃない。

降伏するにしてもある程度有利なところまで持ち込まなくてはダメだ。

かといってコイツらを殺すのもマズイ。

最高幹部だとか四天王だとか言う彼女等はただの下っ端ではない。

殺せば確実にラグアの恨みを買う。

そもそもコイツらでさえ王級クラス。

実力はおそらく自分に匹敵する。

殺しきれるかどうかも微妙なところだ。

やり過ぎてもダメ。

やらな過ぎてもダメ。

引き分けに持ち込むそれがベスト。


リルは答える。


「こちらにも、色々と事情があるものでな。それでこちらの提案は受け入れてもらえるか?」


「あのさ、提案って言うのは対等の条件が出せてはじめて成り立つんだよ?お前が言ってるそれは提案じゃなくてただの願望だよ。それに…」


フィリアはそこで一度言葉を切る。

そして一拍おいて言う。


「デモンピクシーをそのままにしておくから死人がたくさん出ておもしろいんじゃん」


フィリアは邪悪な笑みを浮かべながら、そう言うのだった。


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