第125話ドワーフ国家ドーラス王国6
「カティア様いかがなさいました?具合でも悪いのですか?」
セリーが言った。
いやお前のせいだよ。
カティアは心の中で毒づく。
無論本人には言えないが…
カティアは少し考えてから言う。
「フォルンさん、それはフォルンさん個人のお話でしょうか?それともドーラス王国の総意でしょうか?」
それにより話は変わってくる。
フォルン個人の話ならまだチャンスはある。
同盟を結びに行って属国などにした日にはラグアに何を言われるかわからない。
「それは…」
フォルンは口ごもる。
ダスカーはどうにでもなる。
まだアイツがヤンチャなガキだった頃から知っている。
自分が強く言えば従うだろう。
エルクのバカも、今回の不始末で自分に強く言えないのでどうにでもなる。
問題はウリンとキャリーだ。
この国でのウリンの発言力は自分を超える。
あの女は自分が物心ついた頃にはすでに今の姿をしていた。
ウリンの固有スキルの不老は人工スキルではない。
年齢ではまず向こうが上。
おまけに王級アンドロイドの考案者で、この国最高峰の技術を持っている。
功績も向こうの方が上。
キャリーは確実にウリンの意見に賛同する。
ウリンが強く言えばエルクも意見を覆し、結果は3対2で否決。
下手をすれば魔王ラグアとの全面戦争だ。
それだけは避けねばならない。
「…私が説得します」
フォルンはそう後に続けた。
その時…
「説得?あんたに任せたのが間違いだったよ。代わりな」
部屋に1人の人物が現れた。
そう入ってきたのではなく現れたのだ。
いきなり客人の前に転移するなど、失礼にも程がある。
しかもただの客人ではないのだ。
「ウリンっ!!客人の前で失礼だぞっ!!」
フォルンは叫んだ。
「黙れ、売国奴が。どうやって話をまとめるかと思えばこの様か?所詮は老害だな」
ウリンはそう吐き捨てるとカティア達の方に向き直る。
「はじめましてお客様方。私はこの国を治める5王の1人、ウリン・ドーラスと申します。先程はうちの者が大変失礼しました。どうかこの老害の言った事は忘れて下さい。今後の話はこの老害に代わり私が引き継ぎます」
ウリン・ドーラスはいつものヒステリック気味な雰囲気は出さずに丁寧に言った。
だが、フォルンは思う。
相手に対して敬意は払いつつも媚びる気は一切ない。
これが自分とウリンの差…
これが統治者としての格の違い…
5王は一応ダスカーがリーダーと言う事になっているが、5王の中でのダスカーの発言力はせいぜい3番目。
最も発言力があるのがウリン。
次いで自分だ。
まだ若いキャリーとエルクはどっこいどっこいと言ったところだ。
セリーは名乗ったウリンを見て少し口角を上げて言った。
「ほう?そこの5王の1人は今回の不始末をラグア様に忠誠を誓う事でこれから償っていくと言った。貴様はどう償う?」
「それは色々と考えはございますが、お時間が許す限りゆっくりと話し合っていきましょう。それからそこの老害はつい先程、除籍処分にしたのでもはや5王ではありません。何の権力もない老害をラグア様の配下にするのはあまりにも失礼かと思いまして、ノックもせずに飛び込んでしまいました。お詫び申し上げます」
元5王になってしまったフォルン・ドーラスは、ウリンの言葉が信じられずに硬直するのだった。




