第124話ドワーフ国家ドーラス王国5
外務大臣の男が出て行ってから約10分。
部屋には老齢に差し掛かったドワーフの男が入ってきた。
「此度の無礼大変申し訳ございません。我…いや、私はこの国を治める5王の1人、フォルン・ドーラスと申します」
フォルン・ドーラスは開口一番に頭を下げた。
「ほう?やっとまともなのが出てきたか。まさかと思うが、謝って終わりだと…」
「セリー様っ!!」
カティアはいきなり恐喝から入ろうとするセリーを止める。
カティアは思う。
ラグア一派のうちまともに平和的な話し合いができるのは、自分とノーマンぐらいだ。
他のラグアの配下の面々の話し合いは、はいかイエスしか受け付けないただの恐喝である。
ラグア本人も自分ではできてると思っているらしいが、神の力や帝級スキルを隠しもせずに他国に行き、イエスしか言えない状況にしてから交渉を進めるなんてもはや交渉じゃない。
仕方ない。
ここは自分が平和的に解決してみせる。
カティアは珍しくやる気だが、化け物みたいな護衛を二人も連れて他国に乗り込むのは威圧行為以外、何ものでもない。
カティア自身もラグア達と接しているうちに常識が失われつつあった。
「私にできる事ならなんでもします。どうか此度の失態は穏便に済ませて頂くわけにはいかないでしょうか?」
フォルンも必死だ。
正直、被害度外視で20しかない王級アンドロイドを投入すればセリーは倒せるかも知れない。
王級アンドロイドを1体作るのに必要なのは、1万の固有スキルと1億人分の生命エネルギー。
通常スキルは持っているものも多いが、固有スキル持ちは希少な存在だ。
しかも人工スキルではなく、自然発生限定…
20体作るのにどれほどの時間がかかった事か。
だが、それを投入したところでセリーに勝てる保証はない。
自分達は王級スキル同士の戦いなど経験がない。
本当は王級アンドロイド同士の模擬戦でもやればいいのだろうが、それは数百万年前の5王での会議の結果…
「あたしの最高傑作の王級アンドロイドが壊れたら誰が責任とるんだ?」
と言うウリンの一言で却下された。
こんな事なら王級アンドロイドの模擬戦を押し通すべきだったか?
いや、そもそもこのセリーと言う女を倒したところでなんの解決にもならない。
それどころか腹心を殺され怒り狂った魔王にこの国は塵にされるだろう。
それでは本末転倒。
ラグア一派と事を構えるなら、最低でも神にまで至っていないと話にならない。
その時点で戦うなんて選択肢はないのだが…
「なんでもする?つまりそれは降伏か?この国はラグア様に忠誠を誓うと言う意味か?」
「だからセリー様、私達は…」
「はっ、このフォルン・ドーラスの名に誓って偉大なる魔王ラグア様に忠誠を誓います」
ええーーーっ
王様配下にしちゃったし…。
終わった…。
もうダメだ。
もう同盟の話にはもっていけない。
私の手柄ですって顔でドヤ顔しているセリーを見つめながら、カティアは頭を抱えるのだった。