第108話幹部候補生
エミリーの配下になった翌日、シュドレ達は兵舎にいた。
はじめから幹部候補生なのは有難い。
シュドレの目的はラグアの側近になり、寝首をかく為にはかなりの近道だ。
シュドレはそう思った。
〜〜〜
「この方はワタシの配下で新しい幹部候補生のシュドレ・イロードです」
エミリーは兵舎に集まる人々にそう宣言した。
その数およそ100人。
現在ここに集まっているのは、皆幹部候補生である。
エミリーの宣言を聞いて他の幹部候補生達はざわついた。
それはそうだ。
入ったばかりの新入りがいきなり幹部候補生など聞いた事がない。
いきなり特別幹部になったゴルド・シーマを除けば異例中の異例である。
だが、ゴルド・シーマの場合は元々が13魔王の実力者だ。
異例の取り立ても頷ける。
だが、今回のシュドレに関しては何の情報も聞かされていない。
幹部候補生の1人が言う。
「エミリー様。ソイツは誰です?そんな訳のわからないヤツがいきなり幹部候補生なんて他の者が納得しませんよ?」
エミリーは幹部候補生の言葉に溜息を吐いた。
何でこんな相手の実力もわからないヤツが幹部候補生にいるのだろう。
周りを見渡すと20人程その様な者が見受けられる。
エミリーは怒気をこめて言う。
「バカですか?彼の実力もわからない様なバカは今すぐ出て行ってください。どっちにしろそんな連中は幹部になど絶対になれませんから」
ざわついていたのが静かになった。
「それから隣にいる2人はシュドレさんのお仲間だそうです。こちらは紹介は省きます。あとで興味のある人は直接聞いて下さい。それから…」
エミリーはシュドレの幹部候補生入りに対して納得していなかった約20名を呼ぶ。
「あなた方は降格です。一般兵からやり直して下さい」
「そっそんなっ」
「まっ待って下さいっ」
エミリーは反論する部下達を無視して言う。
「それではこれで紹介は終わりにします。各自通常業務に戻って下さい」
エミリーは無理矢理終わらせて兵舎を出て行った。
ちなみに幹部候補生は小隊長以上の者を言う。
幹部は中隊長からだ。
つまりシュドレは最初から小隊長である。
エミリーが去った後の兵舎の空気は最悪だった。
「ガキがぁぁぁ、ナメてんじゃねーぞ?実力がわからない?お前を殺せばお前以上って事だろ?」
降格組の1人はいきなりシュドレに斬りかかってきたが、バルダに殴られて5メートル程飛んでいった。
斬りかかった男は完全にのびている。
男の様子をみてようやく自分達が敵う相手じゃない事に気づいた降格組は肩を落として兵舎を出ていった。
そんなシュドレ達に近づく男がいた。
「なんだ?お前も俺達の事が気に入らねーのか?」
バルダは喧嘩ごしにそう言ったが、男の返答は予想外のものだった。
「お前らすげーな。そっちの戦士の男と魔法使いの女だけでもエミリー様と同じくらいの力を感じるぜ?真ん中のシュドレだっけか?お前は全く底が見えねーわ。俺はグレス。一応幹部候補生だ。お前は俺なんかすぐに追い越すだろうがまあ、仲良くしようぜ?」
グレスはシュドレに向かってそう言うのだった。




