第107話来訪者4
「そうですか。そうゆう事でしたらとりあえずお試しで幹部候補生として、ワタシの下につきませんか?」
エミリーはそう提案してきた。
とりあえずはエミリーの下で内部の情報や組織構成を探るのもいいだろう。
そう思いシュドレは答える。
「わかりました。これからよろしくお願いします。エミリー様」
〜エルライド城客室〜
ここは勇者達の為にエミリーがとった部屋。
この部屋もかなり豪華と言える部類なのだが、最高位の客室はカティア達とノーマンで埋まっている。
ここもエミリーが用意できる限界の部屋だった。
「シュドレ、上手くいったわね。ラグア一味に潜りこめたわ」
そう言ったのはシャリーだ。
先ほどの対談はとりあえずエミリーの下につくと言う事で落ち着いた。
「いや、そうも言ってられないぞ。まだあのエミリーとか言う女がどれだけの権限を持っているかわからんん。もしかしたらただの下っ端かも知れん。もしそうなら魔王ラグアになどいつまでたっても会えないぞ?
そう言ったのはバルダだ。
シュドレは2人に答える。
「まあ、ラグア一味に潜りこめたのは大きな一歩だけど、あのエミリーとか言う女はおそらく下っ端ではないだろうが、ラグアの片腕かと言われるとたぶん違う。おそらくは幹部でもラグアの側近の一人ぐらいに考えていた方がいいだろう」
実際のところエミリーは幹部とは言え、ラグアに直接会える様な立場ではないが、まだこの国の組織構成を知らないシュドレ達は知らない。
とりあえず明日、最初に新入りとしての紹介があるそうだ。
これ以上考えても仕方がない。
情報収集は明日からにしよう。
そう思いシュドレは今日は休む事にする。
〜〜〜
「ふふっ、ふふふっ」
1人になった第2応接室でエミリーは笑う。
勇者を自分の部下に引き込む事に成功した。
こんな素晴らしい事があるだろうか?
あの勇者は確実に王級に到達している。
それを一時的とは言え、自分の部下に引き込めたのだ。
やり方によっては適当な理由をつけて引き伸ばす事もできる。
あと数日後に迫る世界に対する第2次侵攻。
そこで手柄を立てれば最高幹部は無理でも、特別幹部の椅子は見えてくる。
現在、特別幹部の椅子に座っているのはたった1人。
元13魔王序列第7位、ゴルド・シーマだけだ。
特別幹部は彼の為に作られたとも言われているが、ライナー様の話では、今後手柄を立ててとりたてられる者も出るだろうとの事だ。
今回はかなりの幸運が重なった。
ラグア様やエリス様はお忙しく、更に最高幹部達の不在。
千載一遇のこのチャンスは絶対に逃さない。
正直、ワタシの才能では自力で王級にまで至るのは不可能に近い。
ライナー様やセリー様はワタシ達同期の中でも別格だ。
エリス様はワタシ達に平等に鍛え、チャンスを与えてくれたが、あの2人は本物の天才だ。
ワタシ達凡人には一生かかっても辿りつけない。
今まではワタシはこれ以上の昇進は諦めていた。
だが、今回は違う。
あの日の事は昨日の様に思い出される。
味方の大軍はラグア様に紙くずの様に引き裂かれ、辺り一面を血の海に染めた。
エリス様に捕虜にされていなかったらワタシも生きてはいないだろう。
エリス様には感謝している。
この恩にはエリス様の役に立つ事で報いたい。
その為には今の立場では難しい。
話が逸れた。
勇者を上手く利用してこのチャンスを必ず掴む。
「エリス様、見ていて下さい」
エミリーはそう呟くのだった。




